「た、ただいま……」
 だけど幸せな時間の後、すぐに待っている現実。すっかり遅くなって、結局怖くて連絡もできずに、ご飯とか、門限とか。うぅ、どうしよう。
「良子! 帰ったの!」
「う、うん」
 家に入ると同時に、飛び出してくるお母さん。
「もう心配したじゃない」
「えっと、うん」
「連絡ぐらいしなさいよ、事故にでも遭ったのかと思ったわ」
「ごめんなさい……」
 やっぱり、マズかったよね。私は親から見れば基本、いい子ちゃん。連絡もなくこんな時間に帰宅したことは、たぶん一度もなかったからこそ、今日みたいなことをすると余計に心配をかけちゃう。
「今日はなにをしていたの? 怒らないから、正直に話してみなさい」
「え、えっとね」
「うん」
 説明。先輩と、じゃ変かな、やっぱり。
「友達と、友達とね、遊んでいて」
 少し恥ずかしいけど、言っちゃった。
「……そう」
「お母さん?」
 急に、表情が緩んだ。
「お風呂沸いているから、入ってきなさい。ご飯もまだでしょ。出たら食べましょう」
「う、うん」
 お説教を覚悟していたけど、助かった? うーん、だけど怒らせたら怖いし、早く入らないと。
 色々買った物、整理は、あとでいいかな。服とか、そんなのばかりだから。
「……そうだ」
 鞄に、大切にしまっていた紙を取り出して、ぺたりと、机の目立つ部分に貼ってみる。色々と装飾された、私と日向先輩の写真。連れていかれたゲームセンター。そこで撮ったプリクラ。
 かけがえのない時間を切り取った、大切な証。