中学の頃までの私の夏休みは、いつもひとりぼっちだった。
家に籠って本を読み、ゲームをして。誰かと会うことなんてほとんどない。それがちょうどいい。私はそういう人間。
それは仲のいい相手できた今年も変わらない。高校に入ってようやくできた、人生で初めての友達二人から送られてくる写真とメッセージ。楽しそうな笑顔、別にハブられたとかじゃなくて、私も誘われたけど断っただけ。
長期休みの早々ぐらい、自由を満喫したかった。私の事を理解した上で仲良くしてくれている二人は、残念そうにしながらもそれを受け入れてくれて、その上で遊んでいる様子を送ってほしいと伝えたら、嬉しそうに頷いてくれた、けど。
今度は、一緒に行こうかな。あんまり断るのも、悪いし。けどやっぱり面倒? 一人の時間は大切だし、まあそれも私らしさ、かな。
『ブブッ』
あれ、スマホに通知。また二人から、と思ったけど。
「日向先輩……」
同じ部活の先輩。珍しいな、連絡をくれるなんて。部活のこと? だけど続く文字は『今日用事ある?』で。
用事、『ないです』と素直に返信したら、『それなら、遊びに行かない?』だって。
「はぁ」
待ち合わせ場所で、ため息ひとつ。返事の仕方を完全に間違った。確かに用事はないけど、家に引きこもっているつもりで、誰かと一緒に出かけるつもりなんて、微塵もなかったのに。これなら、友達と遊びに行けばよかったかな。だけど先輩だし、返事をした私が悪い。
だけど、せっかく一人の時間を失くしてしまって憂鬱。そもそも、どうしてあの人は私を誘ったんだろう。そんなに接点があるわけじゃない、家の場所の関係で部活後は一緒に帰って、そこでよく話したりはするけど。
……それはつまり、私的には案外仲良しな方? だけど友達がいっぱいいるあの人からすれば、ただの後輩の一人だろうし。
「おまたせー!」
あ、来た。
「待たせた?」
「いや、そんなには」
「ごめんごめん、急だったから、良子ちゃんはもうちょい時間かかると思ってさ」
なによ、少し遅れたのにそんな軽い感じで。
「これでも、時間はそれなりに守る方なんで」
「みたいだね、いい子いい子」
「なっ」
急に頭を撫でられる。
「な、なんですか?」
「いや、後輩を褒めてあげたくて」
「は、はあ」
ビックリした。いつも距離の近い人だけど、今日は特別に近い、かもしれない。
「それで、今日はどこへ行くんですか?」
「ノープランだよ」
「はい?」
「なーんにも考えてない」
「いやいや」
自分から誘っておいて、なによそれ。
「その場のノリで遊ぶの好きなんだけど、良子ちゃんは、嫌い?」
「……そういうの、経験したことがないんで」
予定とかはきっちり決めちゃうタイプだから。
「別に今から考えてもいいけどさ、流れに身を任せて遊ぶのも楽しいものだよ」
「そうなんですか?」
「うん、私はそっち派」
日向さんなりのやり方? というかリア充の思考回路?
「まあ変に考えないで、とにかく行こうよ!」
「わっ」
手、思い切り引かれる。
「良子ちゃんが好きなことはなんだっけ」
「え、えっと」
「おしゃれさんだから服でも見る?」
「い、いや、それは」
私の趣味、少し人とは違うし、日向先輩とは全然あわないし。
「任せて! 日向ちゃん先輩が見繕ってあげるから!」
「ちょ」
肯定も否定もしてないのに。
「よーし、じゃあ駅まで行くぞー」
「ま、待って」
「レッツゴー!」
「ま、待ってくださいよ!」
ああもう、勢いが凄い。これ、ついていけるのかな……。
「色々買えたねー」
「ですね」
どちらかといえば、というより殆ど買い物をしたのは私だけど。連れていかれた店は、私の好みの系統ばかり。絶対に自分の趣味じゃないのに、日向さんは、笑顔で私の買い物に付き合ってくれただけ、みたいな。
「日向さん、こういうのも好きなんですか?」
「いや、そうでも」
「その割に、お店のチョイス」
「あー、ちょっと気にはなっていてさ。良子ちゃんの私服とかで」
「あー」
なるほど、きっかけは私なんだ。
「一緒に来てくれたおかげで、なかなか興味深かったよ」
だから私と一緒に来たかったんだ。
「そういえば前、この辺りでお洒落なカフェ見つけてさ」
「カフェ、ですか?」
「ちょうどいいから、今日行こうよ!」
「いいですね」
反対する理由もない。だって。
「ほら、あそこに見えるお店!」
「おお、いい感じの外観ですね」
「でしょー」
このお店もそう。やっぱり、ノリで動くなんて言いながら、私の好みに合わせて動いてくれている。照れ隠しとか、見栄とか、そんな理由もあるかもだけど。
「良子ちゃんの好きそうなフルーツケーキもあるみたいだよ」
一番はきっと素直じゃない私に気を使わせず、純粋に楽しませてくれる為。
全部偶然で、私の都合のいい解釈かもしれないけど、聞いても、とぼけられるだけだろうけど、この人なら、きっと。
家に籠って本を読み、ゲームをして。誰かと会うことなんてほとんどない。それがちょうどいい。私はそういう人間。
それは仲のいい相手できた今年も変わらない。高校に入ってようやくできた、人生で初めての友達二人から送られてくる写真とメッセージ。楽しそうな笑顔、別にハブられたとかじゃなくて、私も誘われたけど断っただけ。
長期休みの早々ぐらい、自由を満喫したかった。私の事を理解した上で仲良くしてくれている二人は、残念そうにしながらもそれを受け入れてくれて、その上で遊んでいる様子を送ってほしいと伝えたら、嬉しそうに頷いてくれた、けど。
今度は、一緒に行こうかな。あんまり断るのも、悪いし。けどやっぱり面倒? 一人の時間は大切だし、まあそれも私らしさ、かな。
『ブブッ』
あれ、スマホに通知。また二人から、と思ったけど。
「日向先輩……」
同じ部活の先輩。珍しいな、連絡をくれるなんて。部活のこと? だけど続く文字は『今日用事ある?』で。
用事、『ないです』と素直に返信したら、『それなら、遊びに行かない?』だって。
「はぁ」
待ち合わせ場所で、ため息ひとつ。返事の仕方を完全に間違った。確かに用事はないけど、家に引きこもっているつもりで、誰かと一緒に出かけるつもりなんて、微塵もなかったのに。これなら、友達と遊びに行けばよかったかな。だけど先輩だし、返事をした私が悪い。
だけど、せっかく一人の時間を失くしてしまって憂鬱。そもそも、どうしてあの人は私を誘ったんだろう。そんなに接点があるわけじゃない、家の場所の関係で部活後は一緒に帰って、そこでよく話したりはするけど。
……それはつまり、私的には案外仲良しな方? だけど友達がいっぱいいるあの人からすれば、ただの後輩の一人だろうし。
「おまたせー!」
あ、来た。
「待たせた?」
「いや、そんなには」
「ごめんごめん、急だったから、良子ちゃんはもうちょい時間かかると思ってさ」
なによ、少し遅れたのにそんな軽い感じで。
「これでも、時間はそれなりに守る方なんで」
「みたいだね、いい子いい子」
「なっ」
急に頭を撫でられる。
「な、なんですか?」
「いや、後輩を褒めてあげたくて」
「は、はあ」
ビックリした。いつも距離の近い人だけど、今日は特別に近い、かもしれない。
「それで、今日はどこへ行くんですか?」
「ノープランだよ」
「はい?」
「なーんにも考えてない」
「いやいや」
自分から誘っておいて、なによそれ。
「その場のノリで遊ぶの好きなんだけど、良子ちゃんは、嫌い?」
「……そういうの、経験したことがないんで」
予定とかはきっちり決めちゃうタイプだから。
「別に今から考えてもいいけどさ、流れに身を任せて遊ぶのも楽しいものだよ」
「そうなんですか?」
「うん、私はそっち派」
日向さんなりのやり方? というかリア充の思考回路?
「まあ変に考えないで、とにかく行こうよ!」
「わっ」
手、思い切り引かれる。
「良子ちゃんが好きなことはなんだっけ」
「え、えっと」
「おしゃれさんだから服でも見る?」
「い、いや、それは」
私の趣味、少し人とは違うし、日向先輩とは全然あわないし。
「任せて! 日向ちゃん先輩が見繕ってあげるから!」
「ちょ」
肯定も否定もしてないのに。
「よーし、じゃあ駅まで行くぞー」
「ま、待って」
「レッツゴー!」
「ま、待ってくださいよ!」
ああもう、勢いが凄い。これ、ついていけるのかな……。
「色々買えたねー」
「ですね」
どちらかといえば、というより殆ど買い物をしたのは私だけど。連れていかれた店は、私の好みの系統ばかり。絶対に自分の趣味じゃないのに、日向さんは、笑顔で私の買い物に付き合ってくれただけ、みたいな。
「日向さん、こういうのも好きなんですか?」
「いや、そうでも」
「その割に、お店のチョイス」
「あー、ちょっと気にはなっていてさ。良子ちゃんの私服とかで」
「あー」
なるほど、きっかけは私なんだ。
「一緒に来てくれたおかげで、なかなか興味深かったよ」
だから私と一緒に来たかったんだ。
「そういえば前、この辺りでお洒落なカフェ見つけてさ」
「カフェ、ですか?」
「ちょうどいいから、今日行こうよ!」
「いいですね」
反対する理由もない。だって。
「ほら、あそこに見えるお店!」
「おお、いい感じの外観ですね」
「でしょー」
このお店もそう。やっぱり、ノリで動くなんて言いながら、私の好みに合わせて動いてくれている。照れ隠しとか、見栄とか、そんな理由もあるかもだけど。
「良子ちゃんの好きそうなフルーツケーキもあるみたいだよ」
一番はきっと素直じゃない私に気を使わせず、純粋に楽しませてくれる為。
全部偶然で、私の都合のいい解釈かもしれないけど、聞いても、とぼけられるだけだろうけど、この人なら、きっと。