シンガーソングライターとして動画サイトに投稿していた自作のアニメーションやトリック動画をつけた“歌ってみた”や“作詞作曲した自作の曲”を、ライブバーやライブカフェで宣伝兼ねて歌った。

そして、小説の作家のプロフィール写真に顔出しをした。

「美月ちゃん、情報番組から番組にゲスト出演の依頼がきてるけどどうする?」

「受けます!!」

本名で活動してる私。
だから、13年前に、“無垢で天使のような可愛さ千年に1人の美少女”として話題になった事と澤島神社で神通力が使える巫女をしていたネタがあがり、その経歴と共に小説や曲が大ヒットした。

「美月ちゃん、須藤結弦《すどうゆずる》から夏の京宝映画の主題歌のデュエットのオファーきてるけどどうする?」

「やります!!」

作詞作曲歌唱力が神級の憧れのトップアーティストからの声をかけて頂いて感動する。
しかも、映画を観させて頂いて、曲の作詞も任せて貰えた。

レコーディングの日。
朝からそわそわする。

人気アーティストとのコラボ。
京宝アニメは小学校高学年ぐらいからハマってた。

その京宝アニメの主題歌に歌詞ををつけ歌わせて貰えるなんて感激してる。

ソミーミュージックのスタジオでレコーディングをする事になり、人気アーティストの須藤結弦に会えるのも嬉しい。

私がシンガーソングライターを始めたのは須藤結弦の創作した曲を聞いたから。
ポカロからデビューし、自身で歌うようになってから大ブレークした須藤結弦。
クールで純粋に音楽を楽しんでる方で、ラジオには友人のアーティストの番組のゲストで出演をしてもバラエティー番組や情報番組には出演しない。

15分前にスタジオに入る。
須藤結弦はまだこられてなかった。
映画製作会社のアニメーション担当の方が映画から切り貼りして作成された主題歌PVを見せて下さった。

救えなかった命に懺悔するように早朝に神社に足を運ぶ研修医と神社の娘で巫女をしてる女子大生の恋愛story。

*****
「佐伯さんって、神通力が使えるといわれてるけど、死者を呼び寄せて話しができたり、奇跡を起こしたりできるの?」

アニメーションPVを見てたら背後から声がして振り返ると須藤結弦がいた。
180cm以上ある身長に手足が長く引き締まった身体をして、美しすぎる整った顔立ちに思わず見惚れてしまった。

須藤結弦は自分をださない人で、素顔をあまり晒してない。
自身を写真や動画で撮影し、それが晒される事を嫌ってる。

「……私にはそんな力ないです」
「そうなんだ!?」
須藤結弦から聞かれた事に慌てて答えた。

付き合おうとした男性が不幸になる神通力しかない。
ーーーこれはもはや呪い。

「……ねぇ、佐伯さん、雰囲気出したいからさ、巫女装束着てくれない?」
「……えっ」
「神秘的な感じで歌いあげたいんだ。だめ!?」

レコーディングにすぐに入るかと思ってたら、須藤結弦に思いつきでいわれ戸惑う。
断りたいけどマネージャーに睨まれ、更衣室に連れてかれてしまった。
用意していたと思われる巫女装束を渡され押し込められる。

白い小袖に緋袴に髪の毛はポニーテールにし、水引で結ぶ。

スタジオに戻ると先に須藤結弦がブースに入ってソロパートのレコーディングしてた。

絶対音感がありリズム感がよく、音域
も広い。
作詞作曲もでき歌唱力も神といわれてる須藤結弦の歌声に身体が震える。

「戻ってきた。巫女コスチューム、いいねぇ。リアルに【神懸かりな力に】の世界観に入って歌おう。佐伯美月さん、美月、こっちにおいで!!」

須藤結弦がヘッドホンを外してブース内から私を手招きして呼んだ。

「須藤さん、CDの宣伝に使いたいから2ショット何枚か写していいですか?」
「……いいねぇ、写真のデータ、後で送って!!」

レコーディングが始まる前になぜか撮影会が始まった。