荷車に道具小屋から丸太と滑車、
それからシャベルと、そして空の棺を運ぶ。


空の棺は盗掘した棺の代わりに埋めるが、
わざわざ競合の葬儀屋からこのダミーを仕入れる
手間賃を考え、廃材を集めて自分で組み立てる。


墓荒らしの仕事は簡単だ。
目的の墓を探し、1.8mの穴を掘り、棺を運ぶ。


棺も商品のひとつだ。
こいつを大事にする客もいる。


今日の商品はアレッサンドロ。
墓碑銘はアレッサンドロ・ディ・カリオストロ。
アレッサンドロはイタリアの男性名だ。
英国人ですらない。


墓の場所は俺が指示し、
3人で墓を掘り、棺ごと取り出す。


1人でもできるが、掘り出す時間を
短縮するには最低でも3人は必要だ。


棺は埋葬するときは
大人4人がロープを使い、墓穴に降ろす。


重量のある棺は、三又に立てた丸太に、
ロープを通した滑車を吊るして引き上げる。


棺を持ち上げたときに、違和感を覚える。
だがそれよりもすぐに別の問題が起きた。


棺を地面に降ろしたときに、
雇った外国人が棺のフタを
シャベルでこじ開けようとした。


組み立てた丸太を片付けていた俺は、
とっさに手にしていた滑車で、
外国人の後頭部をぶん殴った。


質量のある滑車は外国人の頭蓋骨を砕き、
一撃で卒倒させてしまった。


「やっちまった。」


「すんません。
 ちゃんと伝えとけば、んなことには。」


「いや、いい。このまま埋める。」


きつい訛りで謝る少年だが、
過ぎたことは仕方がない。
そもそも殴ったのは俺だ。


俺は掘り出した棺のフタをシャベルでこじ開けた。
自分でも信じがたい背信行為だが、やるしかない。


「ダンナ、なにしてんで?」


「黙って見てろ。」


「…なんだ、こりゃ。」少年は困惑する。


嫌な予感は見事に的中した。
棺の中に死体はなく、石を詰めた麻袋しかない。


「死体は…?」


「しくじったな…。」失敗は死に直結する。


「どうすんで――?」


シャベルで少年の喉に向けた。


まだ喉仏のない首に、
シャベルの先を向けられると
少年は言葉を失い汗を垂らす。


棺のフタを開ければ、仕事は台無し。
信用を失ったも同然だった。


俺はまた棺を穴に落とした。