おじさんがお茶を飲み、おばさんは横で微笑んでいる。
わたしはそんな二人を見ながら、いつもとは違う新鮮な空気を感じ取っていた。

普段の外食では、もっと当たり障りのない会話をしていた。

おじさんの会社でなにがあったとか、おばさんの好きなドラマがとうとか、わたしの学校での出来事とか。

今日は違う。家族として一歩踏み込むようなやりとりだった。

わたしもいつまでもこうして、親戚のおじさんとおばさんという呼び方を続けるわけにもいかないとわかっている。

わたしをここまで育ててくれた二人には感謝の気持ちを持っているし、将来はちゃんと恩返しをしたいという想いもある。

見えない壁を乗り越えるには、やっぱり過去に向き合わないといけない。

両親の情報をもっと頭に入れないとどうしようもない。これはわたしの仕事。

わたし自身が両親のことをもっともっと知りたいと思い、積極的におじさんおばさんとコミュニケーションをとらないといけない。

出来るかな?
そう自分に問いかける。

しないといけないよね。いつまでも子供のままというわけにはいかないから。

おじさんとおばさんはわたしを甘やかしてくれる。だからこそ、自分の意思を強く持たないといけない。

いま考えると、わたしが橘先輩の告白にすぐに返事を出せなかったのは、この記憶障害が影響しているのかもしれない。

誰かと付き合えば、必ず過去について聞かれるときがくる。わたしはそれが嫌だった部分もあるのかもしれない。

ということは、過去に向き合っていけば、橘先輩への気持ちもハッキリするということなのかな。

橘先輩の告白がきっかけでいろいろなものが動き出している、そんな感じがした。