「いや、医学部から一緒の仲間だから、呼び捨てすることに抵抗なくて」

「女の子の名前を呼び捨てにするのは、心を許してるってことだよ」

「そうなんだ」

友紀に対して心を許すと言う気持ちはなかった。

ただ、医学部の同期だから名前で呼び合うことは自然のことだった。

「それにその友紀さんは大我を好きだよね」

まさかの真由香の言葉に驚いた。

「そんなことはないだろ」

「もう、大我は鈍感すぎるよ、あの人の瞳はキラキラして大我を見ていたよ」

今までそんなふうに思ったことはなかった。

「それから何でネクタイ直してもらっていたの」

「特に理由はないけど」

「駄目だよ、まるで奥さんみたいに見えちゃったよ」

「気をつけるよ」
「気をつけるんじゃなくて、もう直してもらっちゃ駄目、名前を呼び捨てにしちゃ駄目、大我って呼んでいいのは私だけだから、大我って呼ばないように言って」

真由香は俺にヤキモチを妬いてくれているんだと気づいた時、満更でもない気持ちだった。