日下部大我三十歳、最上総合病院の内科医である。

物腰が柔らかく、怒った顔は見たことがないほど優しい男性である。

笑顔が素敵で予約が取れないほど人気がある天才的ドクターだ。

俺はこの歳まで恋愛経験はあるものの、結婚までたどり着けない。

恋愛に対して消極的な性格だ。

俺の実家は日下部総合病院だが、親父の後を継ぐ気持ちはない。

俺には五つ年上の兄がいる、その兄が親父の後を継ぐことになっているからだ。

大学医学部の同期である最上丈一郎とは気が合う仲間だ。

「最上総合病院へこいよ、俺は外科医、お前は内科医、ニ本柱でこの病院を盛り立てて行こうぜ」

そんな最上の言葉に乗っかって最上総合病院勤務が決まった。

親父はうるさい位に結婚を急かしてくる。

「お前も三十になったのだから、結婚して落ち着け」

「親父、結婚は一人じゃ出来ないんだよ」

「そんなことは分かっている、見合いしろ」

と言うわけで、抵抗も虚しく俺は見合いをセッティングさせられた。