「対立ですか?」
俺たちの間でも話題になっていたけれど、まさか、先生を悩ませるほどの問題になっていたなんて。
興味を覚えたので、そのまま話を続けてみる。
「どういうことなんですか? よかったから、聞かせてください」
「んー……あなたたちに話すようなことじゃないんですけど、でも、少しでも情報が欲しいですね」
迷った末に、ローラ先生は簡単な事情を説明してくれた。
基本は、三人から聞いた話と変わらない。
三つのクラスの間で、対立構造が構築されつつあるというものだ。
今までは互いをライバルとして競いつつも、足りない部分は補ってきたのだけど……
ここにきて、その構造が変わりつつあった。
ライバルとして競うのではなくて、相手を敵として認識するようになっており、時にいきすぎた言動を取る生徒がしばしば。
なにかしら協力を求められたとしても、相手が別のクラスならば、一切、相手にすることはない。
敵意と不満だけを溜め込むような構造に変化しているらしい。
……そんな話をローラ先生から聞くことができた。
「やっぱりというか、俺、知らなかったなあ……」
「まあ、レン君は唯一の男の子ですからね。一部では、レン君に勝手に手を出したらいけないという、抜け駆け禁止協定もあるみたいですし……それ故に、今回の対立からは遠ざけられていたんでしょう」
え? なにそれ?
抜け駆け禁止とか、初めて聞いたんだけど。
アリーシャとアラム姉さんを見ると、顔を逸らされた。
この反応……二人共知っていたな?
エリゼは、よくわからないという様子で小首を傾げていた。
さすがに学年が違うから、エリゼのところまで俺の話は届いていないのだろう。
――――――――――
その後、フィア、シャルロッテ、メルが合流して……
部活動という名の特訓に励んだ。
そうして部活動を終えて……
空は暗くなり、星が輝くようになっていた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。今日はなにが食べたいですか?」
「ん? 食堂に行かないのか?」
「今日は、私がお兄ちゃんにごはんを作ってあげたい気分なんです。もちろん、みなさんの分も用意しますよ」
こんな感じで、エリゼはちょくちょく俺の面倒を見ようとする。
病気が治り、元気になってからは、その欲求がどんどん強くなっていた。
体を動かせることがうれしいのか?
あるいは、エリクサーのお礼がしたいのか?
どちらにしても悪いことじゃないので、好意に甘えることにした。
「じゃあ、せっかくだから頼むよ」
「リクエストはありますか?」
「んー……ぱっと思い浮かばないけど、肉料理がいいな」
「お肉ですか……はい、わかりました。他に、一緒に食べる人は?」
みんなが一斉に手を挙げる。
仲がいいな。
「わかりました。じゃあ、ちょっとお買い物に行ってきますね」
「え? 今から?」
「部屋にある材料だと、ちょっと心もとなくて。あと、調味料が足りないんですよね」
「そこまでするなら、また今度でも……」
「すぐに街に行けば、まだお店は開いていると思いますから。その分、ちょっと遅くなっちゃいますけど、そこは我慢してもらえるとうれしいです。では、行ってきます!」
エリゼは勝手に話を終わらせてしまい、一人でタタタと街の方に駆けていった。
材料や調味料を買わないとダメと知っていたら、頼まなかったんだけど……
悪いことをしただろうか?
「こら」
「いてっ」
ぽこん、とアリーシャに小突かれた。
「なにぼーっとしているの? 早くエリゼを追いかけなさい」
「ん? なんで?」
「あのね……エリゼ一人に荷物を持たせるつもり?」
「あ」
「それに、まだそれほど遅くはないけど、暗い夜道を女の子一人で歩かせるものじゃないわ」
「そ、そうだな。わかった、すぐに追いかけるよ! サンキュー、アリーシャ」
「鈍いのもほどほどにしなさいよ」
なぜか、アリーシャの言葉に他のみんながコクコクと頷いていた。
俺、鈍いのか……?
――――――――――
「えっと、エリゼは……?」
エリゼを追いかけて夜の街へ。
別れてからそれほど時間は経っていないのだけど、今のエリゼは、抜群の身体能力を持っている。
足も速く、なかなか追いつくことができなかった。
「ええいっ、めんどくさい!」
俺はエリゼほどの体力はないし、街中、全部走り回ることなんてできない。
そもそもすれ違うかもしれない。
なので、手っ取り早い方法でいく。
「探知<サーチ>!」
周囲の魔力を感知する魔法だ。
個人を特定することはできないのだけど……
「向こうか」
たくさんの反応を感じる中で、やたら大きい、飛び抜けた魔力反応があった。
おそらく、これがエリゼだろう。
最近の特訓のおかげで、魔力がかなり上昇しているからな。
他の人とぜんぜん違うため、見つけやすい。
エリゼらしき反応があったところへ向かう。
「しかし……他にも反応があるな?」
エリゼほどじゃないけど、そこそこの魔力反応が二つ。
エリゼらしき反応のすぐ近くにあった。
なにか嫌な予感がする。
俺は急いで反応のあったところへ向かった。
俺たちの間でも話題になっていたけれど、まさか、先生を悩ませるほどの問題になっていたなんて。
興味を覚えたので、そのまま話を続けてみる。
「どういうことなんですか? よかったから、聞かせてください」
「んー……あなたたちに話すようなことじゃないんですけど、でも、少しでも情報が欲しいですね」
迷った末に、ローラ先生は簡単な事情を説明してくれた。
基本は、三人から聞いた話と変わらない。
三つのクラスの間で、対立構造が構築されつつあるというものだ。
今までは互いをライバルとして競いつつも、足りない部分は補ってきたのだけど……
ここにきて、その構造が変わりつつあった。
ライバルとして競うのではなくて、相手を敵として認識するようになっており、時にいきすぎた言動を取る生徒がしばしば。
なにかしら協力を求められたとしても、相手が別のクラスならば、一切、相手にすることはない。
敵意と不満だけを溜め込むような構造に変化しているらしい。
……そんな話をローラ先生から聞くことができた。
「やっぱりというか、俺、知らなかったなあ……」
「まあ、レン君は唯一の男の子ですからね。一部では、レン君に勝手に手を出したらいけないという、抜け駆け禁止協定もあるみたいですし……それ故に、今回の対立からは遠ざけられていたんでしょう」
え? なにそれ?
抜け駆け禁止とか、初めて聞いたんだけど。
アリーシャとアラム姉さんを見ると、顔を逸らされた。
この反応……二人共知っていたな?
エリゼは、よくわからないという様子で小首を傾げていた。
さすがに学年が違うから、エリゼのところまで俺の話は届いていないのだろう。
――――――――――
その後、フィア、シャルロッテ、メルが合流して……
部活動という名の特訓に励んだ。
そうして部活動を終えて……
空は暗くなり、星が輝くようになっていた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。今日はなにが食べたいですか?」
「ん? 食堂に行かないのか?」
「今日は、私がお兄ちゃんにごはんを作ってあげたい気分なんです。もちろん、みなさんの分も用意しますよ」
こんな感じで、エリゼはちょくちょく俺の面倒を見ようとする。
病気が治り、元気になってからは、その欲求がどんどん強くなっていた。
体を動かせることがうれしいのか?
あるいは、エリクサーのお礼がしたいのか?
どちらにしても悪いことじゃないので、好意に甘えることにした。
「じゃあ、せっかくだから頼むよ」
「リクエストはありますか?」
「んー……ぱっと思い浮かばないけど、肉料理がいいな」
「お肉ですか……はい、わかりました。他に、一緒に食べる人は?」
みんなが一斉に手を挙げる。
仲がいいな。
「わかりました。じゃあ、ちょっとお買い物に行ってきますね」
「え? 今から?」
「部屋にある材料だと、ちょっと心もとなくて。あと、調味料が足りないんですよね」
「そこまでするなら、また今度でも……」
「すぐに街に行けば、まだお店は開いていると思いますから。その分、ちょっと遅くなっちゃいますけど、そこは我慢してもらえるとうれしいです。では、行ってきます!」
エリゼは勝手に話を終わらせてしまい、一人でタタタと街の方に駆けていった。
材料や調味料を買わないとダメと知っていたら、頼まなかったんだけど……
悪いことをしただろうか?
「こら」
「いてっ」
ぽこん、とアリーシャに小突かれた。
「なにぼーっとしているの? 早くエリゼを追いかけなさい」
「ん? なんで?」
「あのね……エリゼ一人に荷物を持たせるつもり?」
「あ」
「それに、まだそれほど遅くはないけど、暗い夜道を女の子一人で歩かせるものじゃないわ」
「そ、そうだな。わかった、すぐに追いかけるよ! サンキュー、アリーシャ」
「鈍いのもほどほどにしなさいよ」
なぜか、アリーシャの言葉に他のみんながコクコクと頷いていた。
俺、鈍いのか……?
――――――――――
「えっと、エリゼは……?」
エリゼを追いかけて夜の街へ。
別れてからそれほど時間は経っていないのだけど、今のエリゼは、抜群の身体能力を持っている。
足も速く、なかなか追いつくことができなかった。
「ええいっ、めんどくさい!」
俺はエリゼほどの体力はないし、街中、全部走り回ることなんてできない。
そもそもすれ違うかもしれない。
なので、手っ取り早い方法でいく。
「探知<サーチ>!」
周囲の魔力を感知する魔法だ。
個人を特定することはできないのだけど……
「向こうか」
たくさんの反応を感じる中で、やたら大きい、飛び抜けた魔力反応があった。
おそらく、これがエリゼだろう。
最近の特訓のおかげで、魔力がかなり上昇しているからな。
他の人とぜんぜん違うため、見つけやすい。
エリゼらしき反応があったところへ向かう。
「しかし……他にも反応があるな?」
エリゼほどじゃないけど、そこそこの魔力反応が二つ。
エリゼらしき反応のすぐ近くにあった。
なにか嫌な予感がする。
俺は急いで反応のあったところへ向かった。