冴木さんはなんて優しいの？
幾ら会社の役員の方々から結婚を強く求められてるとはいえ、よりによって何で私？
しかもチビちゃんまで自分の子供として受け入れてくれるなんてどうして？
幾ら考えてもわからなかった。

「雫、寝室はこっちだ」

彼の寝室に案内されると、シンプルな家具に囲まれた部屋の真ん中に、キングサイズのベッドが置いてあり、マクラが二つあった。

「雫、このベッドで二人で寝るぞ」

「えっ？」

私はビックリして、変な声を上げてしまった。

「なんて声出してるんだ、そんなに驚く事じゃないだろう」

「いえ、驚いています、私はソファで十分です」

彼はちょっと伏せ目がちで一つ深呼吸をした。

「雫は妊婦だから、ソファに寝かせる訳にはいかない、俺がソファに寝るよ」

「冴木さんがソファに寝て、私がベッドを占領するなんて駄目です」

彼はため息をついて私に一つの提案をした。

「それならこのベッドで一緒に寝るか、俺がソファで寝るかどちらか選べ、それ以外の選択肢はない」

「えっ？」

どうしよう、彼は私をなんとも思ってないから一緒に寝ても問題ないかもしれないけど、私は彼といるとドキドキしちゃうのに、ベッドで一緒なんて心臓破裂しちゃうよ。