俺は思わず、雫を抱きしめてしまった。

さっき知り合ったばかりの男が、アパートに送って来て、上がり込んで、抱きしめて、ヤバイだろ。

俺の気持ちはマックスだが、雫にとってみたら、今の俺の存在は雫の中にはこれっぽっちもない。

見も知らぬ男性に抱きしめられて、なんて思っただろう。

俺は雫から離れた。

「すみません、これじゃまるでストーカーですよね」

俺は戸惑いを隠せなかった。

でも、雫はとんでもない言葉を口にした。

「そんな事ないです、藤ヶ谷さんと一緒にいると安心します」

雫は俺に笑顔を向けてくれた。

俺は思わず「また、会って貰えますか」と雫に言ってしまった。

雫は「はい、よろしくお願いします」と言ってくれた。

俺は心の中でやったあと叫んだ。

「今度、休みにドライブ行きませんか」

俺は雫をデートに誘った。

「はい、喜んで」

雫は笑顔を俺に向けてくれた。

しかし時折見せる悲しそうな顔が忘れられなかった。

雫はまだ、別れた男を忘れられないでいるのか。

まさか、送ってくれた男性を探していたが、その男、えっ?俺を意識してくれているのか?

本当の事を言うべきか。

今更言えないだろう。

俺は迷っていた。

俺は雫をあの夜、抱いたんだから、どうするべきか考えが及ばない状態だった。