「冴木さん、急にキスなんて心の準備が出来ていないのにビックリします、婚約者を演じる練習なら前もって言ってください」

彼はニッコリ微笑んで、私を膝の上に乗せるべく腕を引き寄せた。

「きゃっ」

「雫、婚約者の練習なんかじゃなくて、雫が可愛かったからキスしたんだ、そんな可愛い声出すとまたキスしたくなる」

私は不思議そうな表情で彼を見つめた。
だって可愛いなんて、彼の目はおかしいんじゃないかと思った。

「冴木さん、眼科行った方がいいですよ、私が可愛く見えるなんて・・・」

彼は声高らかに笑った。

「雫は本当におもしろいな、これからの生活がすごい楽しみだ」

そう言って彼は私を抱きしめた。
私は心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

「そうだ、雫、こっちへおいで」

そう言って彼は南向きの部屋を案内してくれた。

「雫、この部屋を自由に使って構わない」

案内された部屋には家具は備え付けてあり、クローゼットには数点の洋服が揃えられていた。
しかもマタニティ用の洋服も臨月まで着られる様に揃っていた。

「冴木さん、これって・・・」

「会社の秘書に揃えさせた、もし違うブランドが好みなら交換させる」

「大丈夫です、ブランド物なんて着た事なくて、でも可愛い洋服ばかりで最高です、でも臨月まで揃えて頂いて、そんなに私、冴木さんの側に居ていいんですか」

彼は私の手を引き寄せ抱きしめた。

「無期限と言っただろ、雫は俺の妻としてここで俺と生活し、俺の子供として、チビ助を産んで育てる、その為に必要な物は揃えさせるから、遠慮なく言ってくれ、チビ助と雫の安定した生活の為の契約だ」

彼は、私を見つめ、ちゅっと軽いキスをした。