それから私は、誰だかわからない彼の存在を意識し始めた。

そしてある事に気付いた。

私はドアをロックした時必ずチェーンをかける、これはいくら酔って帰っても忘れたことはない。

それなのに、朝起きるとチェーンはかかっていないということは、外からドアをロックしたってことだよね。

やっぱり誰かが酔った私を送ってくれたんだ。

それに電車乗ってないし、タクシー代も払った形跡もない。

拓海?

まさかね。

拓海なら、お説教の一つや二つ浴びせる。

そっと送ってくれて、ベッドに寝かせてくれて、鍵かけてくれて、なんて優しい人。

でももしかして、拓海が心入れ替えて、そっと優しくしてくれてたとしたら。

私は針の穴ほどの期待を抱き、拓海に連絡してみた。