いつものように、俺は雫をアパートへ送り届けた。
雫のバッグの中の鍵で、アパートへ入り、雫をベッドに寝かせる。
身体を離そうとした時、雫は俺に抱きついて来た。
そして、耳元で「拓海」と囁いた。

あの男の名前?
雫は俺の頬を両手で挟み、「拓海」と名前を呼び、俺の唇を塞いだ。

俺の頭の中は一瞬真っ白になり、雫のキスに酔いしれた。

次の瞬間、雫は俺から離れて、ベッドに倒れ込んだ。
そのまま眠ってしまった。

俺は不覚にも茫然とその場に立ち尽くした。
俺は雫とキスした?
でも雫はあの男と間違えたのか。

やはりまだ未練があるんだと確信した。
俺はアパートを後にした。

雫とのキスはドキドキした。
まだ心臓がバクバクうるさい位に暴れている。
また、同じ事が起きたら、俺は我慢出来ないかもしれない。
これでも、相当俺は自分の気持ちを抑えている。

あの男として雫を抱くのか、そんな事出来るはずもない。
俺は何を迷っている。
考える事などないのに、俺はどうしていいかわからなかった。