彼女との出会いは一年前に遡る。
俺は会社役員から結婚を急かされていた。
社長になり、早くパートナーを決めて欲しいと言われていた。
その頃好きな女はいなかった為、結婚の意思はなかった。

そんな時、バーでお酒を飲んでいると、ある女が目に止まった。
男と一緒で幸せそうな笑顔が印象的だった。
しかし、男の方は、何故か心ここにあらずと言った感じで、彼女の話に上の空だった。

「なんだよ、あんなに一生懸命話してるのに、もっと真剣に聞いてやれよ」

俺は、なぜか女に入れ込んでいた。
次の日も、俺はバーに足を運んだ。
無意識に女の姿を探していた。

「あ、いた」

やっぱり、昨日と同じ、女は一生懸命男の気を引こうと必死だ。
俺にはすごくその姿が可愛らしく映った。

次の日も俺はバーに足を運んだ。
しかし、彼女の姿はなかった。
でも、驚くことに男は別の女を連れて現れた。

「えっ? マジかよ、別れたのかな」

すごく気になった、今頃泣いてるんじゃないのか。
俺は彼女に惚れたのか?

そう、あの笑顔を俺に向けてくれたら、俺は結婚してもいいなと思った。

それから二人が一緒にいる姿を見る事はなかった。
泣いているなら、俺が抱きしめてあげたいと思った。
その女は雨宮雫だった。