そこへ峻が降りてきた。

「藤ヶ谷社長お待たせしました」

私は二人が約束していたことに驚きを隠せなかった。

「雫、藤ヶ谷社長と仕事の話があるから、山元に案内させる」

「わかりました」

そして峻は峻助に言い聞かせた。

「峻助、これからパパは仕事があるから、山元に案内して貰ってくれ」

「わかった」

琉は峻助に「またな」と声をかけた。

この時峻が敢えて琉と峻助を会わせたなど、知る術はなかった。

「いい子に成長したな」

琉は安堵の表情を見せた。

琉と峻が仕事の話なんてなんだろうと不思議だった。

「山元さん、あの二人が仕事の話ってなんだか知っていますか」

私は山元さんに尋ねた。

「藤ヶ谷社長から御社と弊社の合併の話が持ちかけられています」

合併?藤ヶ谷不動産と冴木コーポレーションが?

でも何故? 業績もよく売り上げもトップクラスなのに、藤ヶ谷不動産は危ないの?

急に心配になった。

それから、峻助とうちに帰り、峻のかえりを待った。