俺は信じられない状況に我が目を疑った。
雫から抱きついてくるなんて・・・しかも泣いている雫はものすごく可愛いい、つい、人目を憚らず頬にキスをしてしまった。

「雫、一人にしてすまなかった」

雫は俯いて首を横に振った。

「唯香の意識が戻ってちゃんとわかってくれた、ごめん、俺のわがままに付き合わせてしまった、
ここで唯香とちゃんと向き合っておかないと、駄目な気がしたんだ」

「私こそごめんなさい、峻のこと信じられなくて、でも峻は今でも本当は唯香さんの方が大事なんじゃないかって正直言うと思ってます、だけど私が峻と離れて見て、すごく寂しくて、この先峻のいない人生は考えられないって思いました」

「雫」

俺は雫を抱きしめた。
この時改めて、雫を誰にも渡したくないと強く思った。

「雫、今日、チビ助の検診の日だよな」

「はい、今日はご主人といらしてくださいって言われていたので、一人でどうしようかと思ってました」

「そうか、じゃあこれから一緒に行こう」

「はい」

この時俺は二人に近づく黒い闇に気づく事は出来なかった。
雫とチビ助を失うなど誰が想像出来ただろうか。
チビ助は俺の血の繋がった子供ではない、そのことがこの先俺を苦しめる事になろうとは夢にも思わなかった。