私は峻からの電話にわざと出なかった。
峻は唯香さんを愛している、私への優しさは子供の為、チビちゃんが産まれたら私は離婚される、でも峻と離れたくないと強く思った。

その時部屋のドアが開き、そこに立っていたのは峻だった。

「峻?」

「雫、大丈夫か、電話に出ないから心配したぞ」

峻は自分を顧みず私の事が心配で病院を抜け出して来た。

「峻、病院を抜け出してきたんですか?」

「雫が心配でじっとしていられなかった」

峻は私を抱き寄せた、そしてキスをしようとした瞬間、私は峻から離れた。

「雫?」

「唯香さんの代わりはイヤです」

峻は私の言葉に驚きの表情を見せた。

「雫を唯香の代わりと思った事はない」

「だって唯香さんを愛しているんですよね」

「違うよ、この前も伝えただろう、愛してるのは雫だ」

峻はまっすぐに私を見つめた。
私は病室での事を話した。

「だって唯香さんとキスしてましたよね」

「唯香とキスなんてしてないよ、この間の別れ話に納得いかないと病院にやって来たんだ」

私は黙って峻の話を聞いていた。

「抱きつかれたのは事実だが、ちゃんと俺が愛してるのは雫だと伝えた、信じてくれ」

「ごめんなさい、今は峻を信じることが出来ません」

「わかった、俺が雫を利用しようとした事は事実だからな、でも今の俺の気持ちは違う、その事はわかってほしい」

私は下を向いて答えられずにいた。

「雫、俺は雫と別れないし、チビ助を取り上げることもしない、雫を愛してる、俺を信じろ」

峻は私にそう告げると病院へ戻った。