俺は病室で唯香を説得して、雫への気持ちを伝えた。
しかし、唯香は信じられないと言う表情を見せていた。

「峻、どうして?私への愛情は何処へ行ってしまったの?」

「唯香」

「峻、お願い」

唯香は俺に抱きついて来た、俺は彼女の肩を掴んで、引き離し「俺が愛しているのは雫だ」と伝えた。

あれから俺はある事に気づく、そういえば昨日雫は病室へ姿を表さなかったと・・・
今日もすでに時計の針は十二時を回っている。

雫はまた具合が悪いのか?まためまいでも起こしたのか?俺はスマホを手に取り、雫に電話した。
何度呼び出しても雫は出ない、どうしたと言うんだ、急に心配になり、コンシェルジュの千賀に連絡をした。

「冴木様、どうされましたか?お怪我の方は大丈夫でございますか?」

「大丈夫だ、忙しいところすまないが、雫と連絡が取れない、昨日から病院にも姿を見せないんだ、雫の様子を見てくれないか?この間めまいを起こして具合悪くなったから、心配になった」

「かしこまりました」

しばらくしてコンシェルジュ千賀より連絡が入った。

「冴木様、千賀でございます、雫様はお部屋にいらっしゃいました、冴木様からのお電話の事をお伝えすると、マナーモードにしてあったので気づかなかったとおっしゃっていました」

「そうか、忙しいところすまなかった」

「とんでもございません、雫様は具合悪い様子もありませんでした」

「わかった、手間を取らせたな」

「いいえ」

また雫に電話したが、やはり出なかった、しかも折り返しの連絡も無かった。
俺は嫌な予感が脳裏を掠めた。
しかし、雫が唯香との事を誤解して悩んでいたことなど知る術はなかった。