私はしばらくして峻の病室へ向かった。
峻は私の姿を見つけると、「雫、おいで」と私を呼び寄せた。
私は峻の側に行き、差し伸べられた手を握って、「ごめんなさい」と誤った。

「大丈夫だよ、雫はめまいが起きたと山元が言っていたが、大丈夫か」

「はい、この時期よくあるので、転倒に注意してと言われました」

峻の手を握っていると安心する、このまま峻を信じて着いていきたい気持ちが大きくなった。
身を挺して私を守ってくれた峻の気持ちに嘘偽りは無いと信じたい。
でも、もし、唯香さんとの結婚のため、チビちゃんを手に入れるための嘘だったらと思うと、胸が張り裂けそうになった。

しばらくは平穏な日々が流れた。
峻は順調に快復に向かっていた。
ある日、峻の病室へ向かうと、中から話声が聞こえた、女性と話している様子が伺えた。

「唯香」

「峻、お願い」

峻と病室にいるのは唯香さんだった。
私はパニックを起こしていた、「お願い」ってキスのおねだりだよね。
やっぱり峻が愛しているのは唯香さんなんだ。
そうだよね、私は契約結婚の相手だから・・・

急いで病室を後にした。
峻と唯香さんのキスしている様子が、何度も脳裏を掠めた。
頭を振って消そうとしても、何度もフラッシュバックする、「イヤ〜」私は唯香さんに嫉妬していた。