私はしばらく入院を余儀なくされた。
病室は特別室に移ることになった。
彼は毎日様子を見に来てくれた。

「あのう、病室特別室なんて勿体無いです、私は一般病棟で十分です」

「雫は、冴木コーポレーション社長の婚約者で、しかも大事な跡取りの母親だからな、病院も慎重になるよ」

私はポカンとして、彼の言っている事を理解するのに時間がかかった。
チビちゃんは彼の子供じゃないし、私は契約婚約者なのに申し訳ない気持ちになった。

「雫は何も心配しなくていいんだ、俺についてくればいい」

私は彼の優しさに一瞬錯覚に陥った、幸せな結婚生活が送れると・・・
駄目だ、私は彼の契約婚約者なんだからと自分に言い聞かせた。

私が彼の婚約者の振りをすることに、彼なりのメリットはあるのだろうかと不思議に思い尋ねた。

「冴木さん、私が婚約者の振りをすることに、メリットはありますか?」

彼はしばらく私を見つめて口を開いた。

「俺は冴木コーポレーション社長として、結婚を急かされてる、跡取りも残さないといけないし」

私はじっと彼の話に耳を傾けていた。

「何度も見合いさせられて、一緒に暮してもいいと思う女がいなかった、でも雫とは一緒に暮らしたいと思った、それにすでにチビ助いるから、跡取りの心配いらないしな」

えっ?私の何処が良くてそう思ったんだろうかと不思議に感じた。
それにチビちゃんは彼の子供ではないのに・・・