「あいつは雫を愛していない、何故わからないんだ」

「それでもいいの、私が峻を好きなの、それに今はずっと側にいて欲しいって言ってくれる、お腹の中の子を大切に思ってくれている」

わかってる、峻とは契約の関係だから私達の間には愛情は存在しないと・・・
それでも私を必要としてくれているから。
しかし、琉の口からとんでもない真実が告げられた。

「雫のお腹の中の子を大切に思ってるのは、跡取りとして必要だからだ、あいつは自分の子供を残せない、無精子症なんだ、雫は利用されているんだ」

自分の子供を残せない?だから父親のいないチビちゃんを妊娠している私を選んだ、峻が必要なのはチビちゃんだけ。
契約なのはそのため?私は利用されているの?
嘘であって欲しい気持ちと、それなら今までの事が納得いくと思う気持ちが入り混じり、私は混乱していた。

「雫、僕のマンションに行こう、この子は僕たちの子供だ、あいつに取られてもいいのか?」

私はパニック寸前で何も考えられなかった。
でもこのまま、琉についていく事は出来ないと思った。

「少し時間をちょうだい」

「わかった」

琉は「また来るよ」と言い残し、マンションを後にした。
峻が自分の子供を残せない、この事が真実なら理解不能だった事が一本の線で繋がる。
峻が私と契約した事、他の男性の子供を跡取りにしたいと言っている事、私は峻に確かめるべく、帰りを待った。