俺はチビ助のエコーを見ながら、不思議な気持ちになった。
雫を抱いてもいないのに、自分の子供のような錯覚に陥った。
俺はこの時雫とチビ助を一生守っていくと心に誓った。

雫は不思議な女だ、日に日に惹かれていく、雫のためならどんな事でもやってあげたいと想いが募っていく。

産婦人科を後にして雫とマンションに向かった。

「チビ助だったな、男の子か、楽しみだな」

雫は不安そうな表情を時々見せる、どうしたら雫の中の不安を取り除いてやれるのだろうか?

「雫、これから結婚指輪を買いに行こう」

雫はびっくりしたような表情を見せた。

「どうした?そんな顔して、俺変な事言ったか」

「だって、私達は契約結婚ですから、指輪は必要ないと思います」

「無期限の契約と言ったはずだ、さあ、行くぞ」

俺は雫を連れて行きつけのジュエリーショップへ車を走らせた。
店に入ると、雫は目を輝かせて、ジュエリーを見ていた。

「いらっしゃいませ、冴木様、お待ち申し上げておりました」

「結婚指輪を彼女に見せてあげてくれ」

「かしこまりました」

「こちらは今とても人気があり、新しいデザインになっております」

雫は俺の顔を見て、何かを訴えている。

「どうした、雫」

「峻、やっぱりもったいないです、こんなに高価なもの」

雫は欲がない、俺の今まで関わった女性は全てと言っていいほど、俺が御曹司という事もあり、高価なプレゼンを買って貰って当たり前の考えが殆どだったので、俺は戸惑った。

「雫、大丈夫だ、指輪をして俺の妻としての自覚を持ってもらいたい、だから結婚指輪を受け取って欲しい」

雫はしばらく考えていたが俺の顔を見て頷いた。