「雫?」

彼はベッドから起き上がり私の元へ駆け寄った。
そして私の手を引き寄せ抱きしめた。

「夢じゃないよな、雫、戻って来てくれたんだよな」

彼は何度も確かめるように、私に問いかけた。

「峻が許してくれるなら」

私は琉にキスを許してしまった事をちゃんと話しようと思っていた。
でも峻にとって私は契約の関係だから、ちゃんと婚約者の振りをしてくれれば、何の問題も無いのかもしれない。

「許すも何も、俺が雫を守ってやれなかったからな」

私はこの機会に唯香さんとの事を聞こうと口を開いた。

「私は峻に信じろって言われたのに、週刊誌の記者の情報に惑わされて、唯香さんとの事を疑いました、唯香さんが妊娠していると聞かされ、峻の子供なら婚約するのは私ではなく、唯香さんだと思ったのです、だから、私はここに居るべきではないと判断したんです」

峻は私の話に耳を傾けていた。

「マンションを出ようとした時、琉が私を迎えに来て、行くところもなかったので、琉のマンションへ行きました、そしてキスを許してしまいました、その時はっきりわかったんです、私が求めているのは峻だって」

峻の表情が強張った。
そして、私の手を引き寄せ唇を重ねた。
峻の舌が入り込んで、今までに無い烈しいキスを私に浴びせた。
呼吸が苦しくなり、峻の胸を押して唇が離れた。

「雫、もう俺以外に触れさせるな」

峻はそう言って私の唇を指で触れた。

「全て俺のものだ」

峻は私を引き寄せ強く抱きしめた。
いつもは私の体調を気遣ってくれるが、今日は彼らしくない態度が気になった。