私は彼をまともに見る事が出来なかった。
彼は私を抱きしめた。

「ごめんな、嫌な思いさせちまったな」

いつの間にか、秘書の山元さんは部屋を後にしていた。
部屋には彼と私だけになった。
彼は私にキスしようと顔を近づけた。
私は咄嗟に顔を背けた。

「どうかしたか」

「どうもしません、ちょっと疲れちゃって」

「そうか、もう帰ろう」

彼と私はマンションへ戻って来た、部屋に入ると彼は私を抱きしめた。
私の頬に触れて、唇を近づけた。
またしても私は顔を背けた。

次の瞬間、彼は私を廊下の壁に追いやり、私の両手を押さえつけ、強引に唇を重ねた。
舌が絡み合い、息が出来ないくらい、激しさが増して行く。
私は彼の胸を両手で押して距離を置いた。

「俺が嫌いになったのか?」

「違います、彼女いるのになんで私にキスなんかするんですか?」

彼は私の言葉に驚いた表情を見せた。

「彼女?彼女はいないよ」

「だって記者の方が峻はモデルと熱愛中だって・・・」

彼は声高らかに笑った。

「確かに唯香とは付き合っていたが、それも雫と知り合う前のことだよ、それ以来唯香とは会っていない」

私は納得いかない表情を見せた。

「雫、俺を信じろ」