「ただいま、雫?」

私は寝室で横になっていて彼が帰ってきたのに気づかなかった。
彼は寝室に入ってきて、私の顔を覗き込んだ。
私の頬に触れて、唇にキスをした。

私は目を覚まして、彼の顔が目の前にあることに驚きを隠せなかった。
彼は慌てた様子で私から離れた。

「た、ただいま」

「お帰りなさい、ごめんなさい、私寝てましたね」

「気にするな」

彼は目を逸らして寝室からキッチンへ向かった。
私も彼の後を追った。

「あの、すみません、一日中具合悪くて何もお食事用意してないんですが・・・」

彼は私に背中を向けて答えた。

「大丈夫だ、食事は済ませた、明日ちょっと出かけられるか」

彼は私に背を向けたまま問いかけた。
私は彼の前に回り、彼を見つめた。
何故だか、彼は目を逸らした、やっぱり私、嫌われちゃったんだ。

「具合悪いなら横になってても構わないぞ」

彼は私と目を合わそうとはしなかった。
あんなに優しかったのに、急にどうして?
私が役不足だから?契約違反だから?
心の中で彼を問いただした。
溢れる気持ちをしまっておくことが出来ない。
私は彼に気持ちをぶつけていた。

「私、契約解除されるんですか?」

彼は驚いた表情で私を見つめた。

「何言ってるんだ、契約解除はしない」

「それじゃあ、好きな人が出来たんですか?」

彼は私の問いかけに戸惑いを見せた。