雫が泣いているのが電話を通して伝わってきた。
なんで泣いているんだ、俺が原因なのか、俺とベッドを共にすることが、泣くほど嫌なのか?

朝出かける時、唇ではなくおでこにキスをした。
雫の唇にキスをすると、俺の気持ちが耐えられなくなるからだ。

でも雫は変な顔をしていたな、おでこでも俺とのキスは嫌と言うことか?

それともチビ助の父親を思い、泣くほど未練があるのか?
どうすればいい?

「すみません、お仕事中に電話して頂いたのに、私は大丈夫です、もう切りますね」

「待ってくれ、俺に出来ることはあるか」

「だ、大丈夫です」

「そうか、わかった」

雫のわがままはなんでも聞いてやりたい。
こんな気持ちは初めてだ。
大丈夫と言っていた雫がお願いがあると言い出した。

「出来ればでいいので、お仕事終わったらすぐ帰ってきて貰えますか?」

「わかった、すぐ帰る」

なんだ?俺に話でもあると言うのか?
まさか、契約を解除したいと言うことか?
嫌な予感が脳裏を掠める。

雫、俺の側に居てくれ、お前の為なら俺はなんでもすると約束する。
俺は仕事を終えると、雫が待つマンションへ急いだ。