私は現在妊娠三ヶ月に入ったばかりの四十二歳、
この子には父親はいない。

三ヶ月前バーである男性と知り合った、都内にホテルを数多く所有している不動産会社の御曹司藤ヶ谷琉(ふじがや りゅう)三十二歳。
お酒を呑み意気投合し、一夜を共にしてしまう。
私は朝目が覚めた時、隣に彼が寝ていた状況に、その場を逃げ出した。

それ以来琉とは会っていない、連絡先も交換していなかったので、一夜の過ちと自分に言い聞かせて元の生活に戻った。
それからまもなくして妊娠が発覚、私は産む決心を固めた。

ある日急にお腹の痛みに襲われた。
赤ちゃんまでも私から取り上げようとしている神様に、「お願い、この子は連れて行かないで」と必死に祈った。

「大丈夫か?」

苦しがっている私に、声をかけてくれた男性がいた。

「急にお腹が痛くなって、すみません、赤ちゃんがいるんです、三ヶ月です」

彼はすぐに救急車を呼んでくれた。

「救急車をお願いします、妊婦が腹痛を訴えて、妊娠三ヶ月です」

しばらくして救急車が到着した。
私は救急病院に搬送された、どれ位の時間が経過しただろう、目が覚めた私の側に彼は寄り添っていてくれた。

「赤ちゃんは?」

私はチビちゃんのことが気になり、その男性に聞いた。

「大丈夫だ、切迫流産になりかけたが安心しろ」

彼の言葉にほっと胸を撫で下ろした。

「しばらく安静にとのことだから、入院することになる」

私は彼の言葉に不安を隠せずにいた。
どうしよう、入院ってお金ない。

「あのう、私もう大丈夫なので、帰ります」

彼は私の言葉に驚いたような表情を見せた。