純愛だと、父と継母の結婚式で誰かが言っていた。
確かにその通りである。
長く、互いのことを思い続けた2人。
数多の障害を越え、ついに結ばれた男女。
誰もが祝福し、涙ぐみ、これからの幸せを願った。
そして旭は2人の間を引き裂いた、憎い女の子供となった。
それだけに、継母は当初から旭に対してどこか冷たかった。
もともと旭に関心の薄かった父と、継母、旭の2つ上の義兄で新しい生活が進行していく。
それでも旭は元正妻の子。
このまま魔術師としての力が覚醒すれば、この家を継ぐのは旭なのだ。
ところが。
父と継母が再婚してすぐに、義兄はあっさり魔術師としての力を発現させた。
そしてついに旭に、魔術師としての力が現れることはなかった。
これにより、旭と義兄の立場は完全に逆転する。
今や旭はこの家の透明人間。
いてもいなくても変わらない。
魔術師としての能力どころか、勉強にスポーツとなんでも出来る義兄は、町でも評判だ。
おまけに顔も良く、最近はメンズ雑誌の読者モデルまでしている。
自分を好きだと言ってくれた詩織も、実は義兄が好きだった。