「それが、本当は侑真さん目当てだったんだって」
「へえ。死ねばいいのに」
これには2人とも驚いて、思わず真顔で瑠璃を見た。
注目された瑠璃はにっこり微笑んで、鞄の中からお菓子を取り出した。
苺チョコのお菓子だ。
「はい、旭。これでもお食べ」
「俺にくれるの?」
「こういう時は元気出してって言うよりも、お菓子をあげるって決めてるの」
そういえば。
お菓子を受け取りながら、瑠璃とこうして話すのは随分久しぶりだということに気づいた。
今年のバレンタインデーで詩織に告白され、晴れて付き合うことになったと報告したとき、瑠璃が呟いたのだ。
『私、あの子苦手』
旭にとって、詩織は初めてできた彼女だった。地味でなんの能力もない自分を好いてくれた、貴重な存在でもあった。
だから瑠璃の一言に過剰に傷つき、同時に困惑してしまったのだろう。
敵対してしまったような気持ちになり、以来距離を置いていたのだ。
しかしそんな身勝手な自分のことを、瑠璃は思いやってくれている。
「瑠璃、ごめんな」
小さな自分が嫌になり、旭は項垂れた。
今にして思えば、瑠璃は詩織のことについて、何かしら知っていたのかもしれない。