ならば昨日のあれは、吸血鬼が殺人鬼を撃退してくれたということか。
それとも吸血鬼が魔物を殺そうとした?
魔物が魔物を?
「あの」
「はい」
「昨日はなにをしてたの?」
「昨日は協会からの依頼で、指名手配の魔物を追っておりました」
「協会?」
「人ならざる者が、現代社会を生きるためにつくられた組織です。主に力の弱い者の保護、人間に害をなす魔物の排除を目的としております」
「へえ……」
ますます分からなくなってきた。
狼狽える旭に向かい、雛菊は階段を登ってくる。
そして旭と同じ段に立つと、その場で深々頭を下げた。
「このたびはわたくしのせいで、とんだことに巻き込んでしまいました」
「え!?あっ!」
旭は激しく首を振る。
「花守さんのせいじゃないっていうか!そりゃ死にかけたけど、なんか大丈夫だったし!……ん?」
死にかけたけど、なんか大丈夫だった?
口にして、旭ははっとした。
そうだ、そこだ。そのなんかの部分がとても大事なのではないか。
「あの、昨日死にかけたと思うんだけど、どうして生きてるのかな」
自分も雛菊も。