2人は魔術師だ。故に魔力には敏感である。
そしてそのつるには、微かに魔力の残り香があった。
「一体誰がーー」
旭ばかりがこのことを知らない。

学校に着いた旭は、ぐったりと机に突っ伏した。
話し声、足音、笑い声。ざわめきが旭を包み込む。
このまま少し寝てしまいたいと、大きく息を吐く。
しかしそれを許さないのが渉である。
「おっはよーう」
何故かくるくる回りながら登場した彼に、一瞬クラス中の視線が集まる。
できることなら他人のふりをしたいが、ここで無視をすればどんな挙動に出るか分からない。
「おはよう」
旭は寝不足の白い顔で薄く笑った。
渉が笑顔のまま固まり、大きく息を吸い込んだ。
「お前!どうしたんだ、死人みたいな顔して」
「はは」
まさか本当に死にかけたなんて言えない。
「眠れなかったんだ」
「大丈夫か?また家の人らになんかされた?」
ひそひそ聞いてくる渉は、どうやら本気で心配してくれている。
こういうところが憎めない。
旭はゆるゆる首を振った。
「それは本当にない」
「じゃあなんだよ。あ、イイやつあった?」
にたりと渉の顔が緩む。