膝が笑い、何度も足がもつれそうになる。
それでもどうにか足を動かし続けた。振り向けばすぐ後ろにあの男がいる気がした。
ほとんど倒れ込む形で自室に駆け込んだ旭は、震えながら床に嘔吐した。
怖い、怖い、怖い、怖い!
殺されそうになった。いや、ほとんど死にかけた!
顎に響く気持ちの悪い衝撃を、今でもしっかり覚えている。
血の匂いはどこまでも纏わりついてくる。
当然だ、全身血だらけなのだから。
「どうしよう、どうしよう……」
警察に?いや、救急車か?でも……。
横を見ると、ちょうど部屋の角に置いた鏡に顔が映った。
傷は見当たらない。
触れてみる。
痛みもない。
それでは警察かとも思ったが、今起きたことをどう説明すればいいかが分からない。
斧で頭をかち割られましたが、女の子と手を繋いだら治りました?
きっと連行されるのは旭の方だ。警察署ではなく、病院へ。
「あ……」
そこまで考えて、旭はようやく少女を置いてきてしまったことに気づいた。
しかしよくよく見ていたことを思い返してみると、少女は銃を持っていた気がする。
処分とかなんとか……。