それでも旭は手を繋いだ。
途端に暗闇へと深く深く吸い込まれていく。
これが死ぬということなのだろう。
旭は堕ちるところまで堕ち、そしてーー。
ぱちり、目を覚ました。
世界が急速に色を取り戻す。
回る室外機の音、胸の悪い血の匂い、冷たいアスファルト、目の前の赤い瞳。
「ん?」
「え?」
旭と少女の戸惑う声が重なる。
お互い何度も瞬きを繰り返し、繋いだ手を見つめ、また顔を見合わせ、こんな時だというのに頬を染めた。
恐る恐る手を離す。
その手が何故か酷く名残惜しく、旭はますます不思議な感覚に陥った。
状況の理解が追い付かない。
今までになにがあり、そして今何が起こったのだろう。
「お前ら……」
これまで上機嫌だった男の顔つきが一転し、焦りを滲ませていた。
「お前ら、どうして傷が消えている」
それを聞いて、旭は全てを思い出した。
バイト帰りに男に襲われた。あの斧で頭をかち割られたのだ。
「あっ」
「……っ」
次の瞬間、旭と少女は跳ね起きた。
そして旭は路地から飛び出し、少女は男へ飛び掛かった。
旭は走った。
人生で、これ程速く走れたことがあっただろうか。
途端に暗闇へと深く深く吸い込まれていく。
これが死ぬということなのだろう。
旭は堕ちるところまで堕ち、そしてーー。
ぱちり、目を覚ました。
世界が急速に色を取り戻す。
回る室外機の音、胸の悪い血の匂い、冷たいアスファルト、目の前の赤い瞳。
「ん?」
「え?」
旭と少女の戸惑う声が重なる。
お互い何度も瞬きを繰り返し、繋いだ手を見つめ、また顔を見合わせ、こんな時だというのに頬を染めた。
恐る恐る手を離す。
その手が何故か酷く名残惜しく、旭はますます不思議な感覚に陥った。
状況の理解が追い付かない。
今までになにがあり、そして今何が起こったのだろう。
「お前ら……」
これまで上機嫌だった男の顔つきが一転し、焦りを滲ませていた。
「お前ら、どうして傷が消えている」
それを聞いて、旭は全てを思い出した。
バイト帰りに男に襲われた。あの斧で頭をかち割られたのだ。
「あっ」
「……っ」
次の瞬間、旭と少女は跳ね起きた。
そして旭は路地から飛び出し、少女は男へ飛び掛かった。
旭は走った。
人生で、これ程速く走れたことがあっただろうか。