七月中旬。撮影がついに始まった。
 ロケ地は森の中。左右見渡しても、緑色の葉がもりもりとしている木ばかり。

 小道を進んでいくと、近くに小屋が見える場所に着いて、スタンバイ。

 希くんがカメラを持ち、色々な設定をしているっぽい。律くんは大きなマイクや、レフ版と呼ばれる白くて裏側が銀色のものを確認している。ロケハンで試し撮りをした時に台詞がある時はマイクを持ったり、バストアップ撮るシーンで台詞がない時にはレフ版持って顔色綺麗に映るようにしてくれたり、忙しそうだった。

 本番は、私がエキストラをした時の映画の撮影みたいに、とても大きいカメラに線とかが色々ついていて、使い方とかよく分からない機材も沢山持ってくるのかな?って予想をしていたけれど、カメラは希くんがいつも使っている一眼レフカメラそのままで、機材も想像よりはるかに少なかった。

 集まった時にちらっと質問してみると、
「一眼レフカメラはバッテリーの減りが早いけれど、映画みたいに綺麗な画が撮れるんだ。機材は、ひとつひとつの値段が高くて手が届かない! お金があったら、まずはレンズを揃えたい」って教えてくれた。


 準備が終われば本番が始まる。
 そろそろかな?

 私はずっとドキドキしたけれど、それに気がついてくれて、あっちゃんが「大丈夫!今までの事をやればいいだけ」と言いながら背中をぽんぽんとしてくれた。

「じゃあ、カメラ回します! シーン1!スタートゥ!!」

 希くんは、テンション高めに叫んだ。

 最初は私ひとり。
 散歩する為に森に入り、歩くシーンから始まる。

 撮影は順調に進んだ。

 演技だけではなく、たまに映らないシーンはマイクを持ったり、律くんのお手伝いもした。

 動きや台詞を間違えたり何回もしちゃったけれど、何とかここで撮らないと行けなかったシーンを撮り終える事が出来た。

 数回、どんな感じに撮れているか、撮影したシーンを見せてくれた。

 あっちゃんと比べると私なんか未経験だし、演技が下手だなって思ったけれど、一番最初に台本を読んで、こっそり撮ってくれてた映像の自分と比べたら、変われたっぽい。
 あとは、台本を確認した時からずっと一番不安だったシーン。花火大会のシーンだけ。

 そんな時に、事件は起こった。