「台詞を言うと、なんか気持ちが崩れちゃうの。気持ち作れているのかさえよく分からないんだけど……。なんて言えばいいのか、ナツにならなきゃって気持ちが強くなりすぎて」

「じゃあ、一回、役の事を抜きにして、ナツとコウではなくて、柚葉と俺、そのままでやってみよう!」

 悩みを相談すると、提案してくれたので、素直にそうしてみることにした。

 今の私達の関係を考えれば、さっきよりも自然に出来る、きっと。

 実際にやってみると、台詞を出さないと!って感覚がさっきよりもなくなる。言いやすくなった?

 もしかして上達したのかもって思う時はいつも私の心の中の台詞の語尾に「?」がつく。実際始めたばかりでよく分からないし、演技って、正解がない事だと思うから、多分。

きっと前に進めている。うん、きっと。

「こういうの、毎日やってみよう!」
「うん!」