練習をしていると、自分の感情を知ることが出来たり、演技が少し分かってくるのと同時に、もうひとつの大きな変化があった。

「俺、ナツの事が好き」

 七月に入ったばかりの頃、あっちゃんとふたりで練習をしていた時。公園のベンチに一緒に座り、私はピンク色のボトル、あっちゃんは水色のボトルのラムネを飲んでいた。その時、彼は突然そう言った。

 その台詞を聞いた瞬間は、台本にあるコウの台詞かなって思ったんだけど「?」ってすぐになった。

 コウは自分の事を「僕」って呼んでいるから。話し方もコウと違う。あっちゃんだ。

「ん? 今のはコウじゃくて、あっちゃんの言葉?」

「そう」

 お互い、青い空に視線をやりながら会話をしている。

「好きなのは、ナツ?」

「ナツっていうか、柚葉」

「……えっ?」

 初めて告白された。しかも、こんなに自然に。私は目を見開き彼を見た。

 私は、その言葉を聞く前から彼の事が好きだった。確かな事は、役が恋人役だからその流れで、とかじゃなくて、演技をしていない彼、ひとつひとつの事に惹かれていったということ。

「私も、同じ気持ちです」

 そして付き合う事になった。