六月中旬。いつものように公園に集まり、台本を一緒に読んでいた。その日、宿題を出された。

「そろそろ台本覚えた?」

「うーん。微妙。覚えようと思って何回も台詞書いたりもしてるんだけど、なんか頭に入ってこなくて」

 
 彼は腕を組みながら空を見上げて何か考えている。

「よし、宿題! 台本には載ってない部分、ナツの人生、どこで生まれて、どう過ごしてきたのか。今のハルの年齢、十六歳までを書いてみて! あとね、趣味や好きなものとか……。思いつくもの全部! こっちも書いてくる! 面白いんだよ! 考えるの」

 語る時の彼は、今日もキラキラしていた。

 寝る準備を済ませ、自分の部屋の机に向かう。

「うーん……」

 私は今、台本とにらめっこしている。

 今私が演じようとしている女の子は、どんな女の子なのだろう。そこまで考えた事なかった。

 しばらく台本見ても何も思い浮かばないからとりあえずベットに移動してごろごろした。

 きっと、出ては来ないけれど、両親は健在っぽい。

 私は目を瞑り想像してみた。

 このお話は散歩して森に入るシーンから始まる。

 散歩するまでは台本には書いていないけれど、朝起きて、カーテンを開けて「天気が良いな」って独り言も言ったりしているかもしれない。

 自分の家は、両親と妹、私の四人で暮らしている。それぞれ自分で準備した朝ご飯をそれぞれのタイミングで食べて外に出る。でもナツの家族は、両親と、私の三人暮らしで、みんなで一緒に朝ご飯を食べるのかも。

 そこから私の想像の世界が広がってゆく。

 一緒にご飯を食べているこの両親から、ナツは産まれた。どこで? そしてどうやって育っていく? 何に興味を持ち始めるの?

 心の中で問いかけながら、その答えを見つけていく。

 書かないと……。

 そう思うけれど、考えているうちに眠ってしまった。