「ノート、どう?」

 毎回、彼はこの質問をしてくる。
 内容がすっと頭に入ってくる事や、書いてくれた内容について答える。

「ノートの事もだけど、あっちゃんって沢山自分の考えや言葉を持っていて、こんなに話をする人なんだなって思った。小さい頃は無口なイメージだったから」

「……多分、他の事に関しては無口なんだと思う。好きな事だからこんなに話す事が出来るだけ。周りにはよく分からない人だとか陰で思われてそうだし、この世界で損してるタイプだよね、きっと」

 彼の弱音をどんどん知る。彼は小さな頃から、いつもどんと構えていて、強い心を持っていそうなイメージだった。知らない部分が本当に、次々と見えてくる。

 適当な返事をしたら駄目だなって気持ちになって、しばらく考えてから言った。

「でも、私はあっちゃんの書いたノートやひとつひとつの言葉、演技への向かい方が好きだし、希くんや律くんもあっちゃんと一緒にいるのが楽しそうだし。それで良いんじゃない?」

「ありがとう。そう言ってくれて嬉しい。でもね、映画の撮影が終わったら、接点がなくなって、みんな当たり前のように離れていくよ、きっと」

 彼の言葉を聞いて、私は口には出せなかったけれど「私は離れないよ!」って心の中で呟いた。口に出せなかったのは多分、その言葉に確信が持てなかったせい。