木春菊が咲く。

 父も涼もかすみも既に寝ており、キッチンには私と母の二人だけだった。母はお皿を拭きながら微笑んだ。
「ちょっぴりね。でも寂しいとかよりも、きいちゃんが無事かどうかの方がきになって、しかたがなかった」
私は、そっか、と言いながら母から受け取ったお皿を食器棚に戻した。
「お母さんが私を産んでないってわかった時、私、お母さんに酷いこと言ったよね。あの時、やっぱり怒ってた?」
すると母は噴き出した。
「おこるはずが、ないでしょう」
私はお箸を基の場所に戻しながら、母に言った。
「お母さん、あの時は、ごめんね」
助けてくれてありがとう、それも言おうとした時、母が私をぎゅっと抱きしめた。強く、強く。
「きいちゃん、ありがとう」
私は驚いて何も言えなかったが、母の背に手を回した。耳元で母が告げた。
「大好きだよ。ずっと、ずーっと」
私も母のことを抱きしめた。強く、強く。

この世界は、地獄よりも残酷で、天国よりも美しい。
 そんな世界で、私達は誰かを愛す。心から。


        完