木春菊が咲く。

「かすみちゃん、おばあちゃんね、オムライス作ったよ」
母の言葉にかすみは両手をあげて喜び、そのまま母の首に抱き着いた。
「ほんと!?うれしい!おむらいす!おむらいす!」
「ほらほら、きいちゃんも涼くんもはやく。さめちゃうから」
私は母に、ありがとう、と言いながら部屋に上がらせてもらった。懐かしの我が家だ。リビングの方から、おいしそうなにおいがしてきた。
「電話で言われた時はびっくりしちゃった。いざ作ろうとした時に、家に全然材料なかったから」
かすみの手を引きながら母が私にそう言ったので、私と涼は慌てて謝った。けれど母が伝えたかったのはどうやらその先の様だった。
「そしたらね、大ちゃんが“ひとっぱしり買ってくる”って」
「お父さんが?」
母は笑うと、おてて洗いしましょうね、と笑いかけながら母はかすみを洗面所に連れて行った。年に数回しか来ないのに、洗面所にはかすみ専用の踏み台が置かれていた。かすみが上手に手洗いうがいをすませると、母は彼女の両手を拭きながら
「上手にできたねえ」
と褒めた。小さい頃、私が何かできた時も同じように褒めてくれていた。昔を思い出しながら私も手を洗う。母が壁に寄りかかりながらさらに続けた。
「近所のスーパーに行ってくれたのよ。卵と、ピーマンと、鶏肉を買って来てーって」
今度は涼が手を洗い始めた。私がかすみをだっこした。きょろきょろとあたりを見渡したが、父はいない。リビングで待っているのだろう。
「そしたらあの人、“孫の為なら”って」
涼も手洗いうがいを終えたので、私達は再び並んでリビングへと向かった。そして、リビングの扉を開きながら、母はおかしそうに笑ったのだ。
「それで帰ってきた大ちゃんをみてびっくり。ほら」
するとリビングのテーブルにはこれでもかとばかりにご馳走が並んでいた。オムライスは勿論、から揚げ、イカリング、サラダ、おにぎり、ローストビーフ、ポトフ、肉じゃが、福神漬け、お刺身、フライドポテト、春巻き、小籠包、その他諸々。そしてこの数々のご馳走の向こうに、少しバツの悪そうな顔をした父が座っていた。きっとお惣菜含め、こんなに買ってきたことを母に叱られたのだろう。
「どうしたのこれ!?」
思わず私がそう声をあげるのと反対に、かすみは嬉しそうに目を輝かせた。
「かすみのすきなのいっぱいある!」