木春菊が咲く。

 それでも無事に桔梗が高校に入学した時は、大きくなった我が子を見て、込み上げてくる嬉しさを感じずにはいられなかった。桜は自身の高校生活が辛かったこともあり、いつも桔梗のことを心配していた。桔梗のいないところで、本当に彼女が高校生活を楽しんでいると思うか、しつこく大地に尋ねるくらいだった。桜は心の底から桔梗を愛していた。それがわかるからこそ、大地は罪悪感を抱かずにはいられなかったのだ。まるで、全ての自分の罪から逃げているかのようだったからだ。
 俺はお前の母親を救えなかった。それどころか、一度だってそのことをお前に伝えていない。
 桔梗が朝起きても、学校へ行っても、一緒に出掛けても、テレビを見ている時でも、何をしている時でも、いつも心のどこかですべてを告白したい自分が大地にはいたのだ。けれど、すべて話したところで何になろう。希は帰ってこないし、桜の愛が嘘だったことにもならない。このまま何も知らずに過ごすのが、桔梗にとって一番の幸せなのではないか。大地は自分にそう言い聞かせていたし、桜も同意見だった。桔梗が病気になる前までは、だが。
 桔梗が朝寝坊をし始めた時から、大地はずっと嫌な予感がしていた。熱が出た時、成長した桔梗があまりにも希に似ていたから、病院に連れていくこと以外、考えられなかった。もしも同じ病だったら。遺伝性の病気ではなくても、一人の人間である以上、桔梗がそれを患わないという保証はどこにもないのだ。けれど当たってほしくないその予感は当たってしまい、自分の娘は白血病と診断された。かけがえのない存在が、また遠くへ行ってしまうという恐怖が、大地の体を冷たい手で撫でた。