それから退院まで、母はほぼ毎日お見舞いに来てくれた。父も仕事が忙しくない時には顔を見せてくれた。ある時父はとてもぎこちなく、ケーキを渡してくれた。初めて涼が家に来た時に母が買ったケーキと同じだった。
「ありがとう」
私がそう言うと、父は数回頷いて、元気になれよ、と呟いた。この時、私が
「それだけ?」
とからかったのを気にしていたのだろう。いよいよ私が退院して家に帰ると、なんと父が三角帽子を被り、クラッカーを鳴らしたのだ。それでも笑顔がどこかぎこちなくて、私は母と一緒に吹きだしてしまった。一方父は大真面目だったらしく、すっかり落ち込んでしまった。再び私は元の日常に戻ることができたのだ。勿論私の血液型はO型からAB型に変わったが、それを嫌だとは思わなかった。この日の夕食の席で、父と母は希さんのお墓の場所を私に話してくれた。
「きいちゃんが行きたければ、明日にでも行こう」
母はそう言ってくれたけれど、私は首を振った。一人で行きたい、私はそう言ったのだ。いつかは父と母と三人でお墓参りに行きたいが、まずは一人で、母と二人きりになりたい、そう思ったのだ。翌日、私は誰もいない墓場に行き、母の眠る墓石の前で手を合わせた。母の墓石の近くには、とても立派な桜の木が植えてあった。既に散ってしまっていたが、来年は満開の時に来てみたい、そう思った。
「私はこれからもちゃんと、生きてくよ」
私は墓石にそう告げると、後ろの桜の木を見上げて深く息を吸った。
それから数日後、私は再び高校に通っていた。入院中に課題をこなすことで、私は来年度には無事三年生になれることになった。久しぶりに登校した日、私はあの日からずっと気になっていたことを涼に聞いた。あの日の朝、涼が私の病室に駆け込んできてくれた時から。
「どうして、前日に別れようって言ったのに来てくれたの?」
すると涼は笑って答えた。眉を八の字にして、少し困ったような、悲しそうな笑顔だった。
「だってきいちゃんが言ってたじゃん。俺と別れたらどうなるかって聞いた時、速攻で“死ぬ”って。だから彼氏として、それは阻止しなきゃってね」
「なにそれ…」
「ありがとう」
私がそう言うと、父は数回頷いて、元気になれよ、と呟いた。この時、私が
「それだけ?」
とからかったのを気にしていたのだろう。いよいよ私が退院して家に帰ると、なんと父が三角帽子を被り、クラッカーを鳴らしたのだ。それでも笑顔がどこかぎこちなくて、私は母と一緒に吹きだしてしまった。一方父は大真面目だったらしく、すっかり落ち込んでしまった。再び私は元の日常に戻ることができたのだ。勿論私の血液型はO型からAB型に変わったが、それを嫌だとは思わなかった。この日の夕食の席で、父と母は希さんのお墓の場所を私に話してくれた。
「きいちゃんが行きたければ、明日にでも行こう」
母はそう言ってくれたけれど、私は首を振った。一人で行きたい、私はそう言ったのだ。いつかは父と母と三人でお墓参りに行きたいが、まずは一人で、母と二人きりになりたい、そう思ったのだ。翌日、私は誰もいない墓場に行き、母の眠る墓石の前で手を合わせた。母の墓石の近くには、とても立派な桜の木が植えてあった。既に散ってしまっていたが、来年は満開の時に来てみたい、そう思った。
「私はこれからもちゃんと、生きてくよ」
私は墓石にそう告げると、後ろの桜の木を見上げて深く息を吸った。
それから数日後、私は再び高校に通っていた。入院中に課題をこなすことで、私は来年度には無事三年生になれることになった。久しぶりに登校した日、私はあの日からずっと気になっていたことを涼に聞いた。あの日の朝、涼が私の病室に駆け込んできてくれた時から。
「どうして、前日に別れようって言ったのに来てくれたの?」
すると涼は笑って答えた。眉を八の字にして、少し困ったような、悲しそうな笑顔だった。
「だってきいちゃんが言ってたじゃん。俺と別れたらどうなるかって聞いた時、速攻で“死ぬ”って。だから彼氏として、それは阻止しなきゃってね」
「なにそれ…」
