キャッキャと嬉しそうに話す彼女たちの声を聞きながら、私はぴかぴかのローファーを見つめた。知らない人の足元の隙間で、なんとか居場所を見つけようとしている。けれど電車が揺れるたびに足はふらつき、決して誰の靴も踏まないようにと躍起になっているうちに、他の人が足を移動させて、私の足の置き場はあっという間に無くなった。結果、私はつま先立ちで何とか三駅分の道のりを耐えなければならなくなった。
「住福高校前―、すみふくこうこうまえー」
車内アナウンスが流れると、ドアが開いた。高校前なんて、降りる人は限られている。携帯や新聞、つり革を片手に握る大人の合間を縫いながら、私は焦りと一緒に出口に向かう。すみません通してください、私の小さな声に道を開けてくれる人も、舌打ちをしてくる人もいた。
「すみません」
私は何度もそう言いながら、閉まる直前のドアをすり抜けた。ホームでようやく息を吸うと、背中で扉が閉まり、電車が動き出した。誰もかれもがスーツを着て、ネクタイを締めている。そんな彼らを乗せて電車はどんどんと加速していった。
私は改札を抜けて高校へと歩き出した。視界に、ちらりほらりと同じ制服を着た生徒が映るようになった。けれど私は自分のローファーだけを見つめて歩いた。友達なんて、作る気もなかった。だって、私には、友達が何なのか、わからないから。
この頃には他の新入生も到着しており、下駄箱の前で自分のクラスと出席番号を確認したり、緊張しながら互いに挨拶したりしていた。それを見た途端、私は下駄箱の隅に身を隠した。当たり前ではあるが、見たことの無い顔や雰囲気の人ばかりだ。それにあの作り笑い。とてもわざとらしい。
「同じクラス!?え!?よかったー!」
「一緒に行こう!」
「よろしくね!」
彼らは警戒という言葉を知らないのだろうかと私は思った。相手はこの地球上で最も恐ろしい生き物だ。うっかり恨みや殺意でも植え付けてしまったら、何をされるかわからない。私が人を避ける理由それとは別に、またあった。人を傷つけたくないのだ。それが初めて出会う知らない人だろうと、嘘はつきたくなかった。その人は、果たして本当に“よかった”と言える相手なのか、“一緒に行こう”と思える相手なのか、“よろしくね”と誓える相手なのか。そんなこと、“同じクラス”というだけでは判断しきれないはずだ。
「住福高校前―、すみふくこうこうまえー」
車内アナウンスが流れると、ドアが開いた。高校前なんて、降りる人は限られている。携帯や新聞、つり革を片手に握る大人の合間を縫いながら、私は焦りと一緒に出口に向かう。すみません通してください、私の小さな声に道を開けてくれる人も、舌打ちをしてくる人もいた。
「すみません」
私は何度もそう言いながら、閉まる直前のドアをすり抜けた。ホームでようやく息を吸うと、背中で扉が閉まり、電車が動き出した。誰もかれもがスーツを着て、ネクタイを締めている。そんな彼らを乗せて電車はどんどんと加速していった。
私は改札を抜けて高校へと歩き出した。視界に、ちらりほらりと同じ制服を着た生徒が映るようになった。けれど私は自分のローファーだけを見つめて歩いた。友達なんて、作る気もなかった。だって、私には、友達が何なのか、わからないから。
この頃には他の新入生も到着しており、下駄箱の前で自分のクラスと出席番号を確認したり、緊張しながら互いに挨拶したりしていた。それを見た途端、私は下駄箱の隅に身を隠した。当たり前ではあるが、見たことの無い顔や雰囲気の人ばかりだ。それにあの作り笑い。とてもわざとらしい。
「同じクラス!?え!?よかったー!」
「一緒に行こう!」
「よろしくね!」
彼らは警戒という言葉を知らないのだろうかと私は思った。相手はこの地球上で最も恐ろしい生き物だ。うっかり恨みや殺意でも植え付けてしまったら、何をされるかわからない。私が人を避ける理由それとは別に、またあった。人を傷つけたくないのだ。それが初めて出会う知らない人だろうと、嘘はつきたくなかった。その人は、果たして本当に“よかった”と言える相手なのか、“一緒に行こう”と思える相手なのか、“よろしくね”と誓える相手なのか。そんなこと、“同じクラス”というだけでは判断しきれないはずだ。