石川先生が微笑みながら片手を差し出してきたので、私は両手でその手を握り返した。
「ありがとうございました」
母と父と一緒に何度も頭を下げながら、私達は病院を後にした。病院から帰ると、母は慌ただしく夕食を作り出した。
「三週間ぶりにお家でご飯だもんね!きいちゃん、食べたい物とかあったらじゃんじゃん言って!」
最近は食欲も戻ってきていたので、私は母にオムライスを作ってもらう事にした。他に食べたいものはと聞かれたが、今はただオムライスが食べたかったので、他に思いつかなかった。一方母はオムライスだけでは気が済まないらしく、お手製の焼き鳥やとうもろこし、焼きそばなどを作ってくれた。
「今年は夏祭り行けなかったでしょ。だからお家でなんちゃって夏祭りしよ」
そう言いながら母はスーパーの袋からリンゴを取り出した。
「りんご飴も作るから!大ちゃんも好きでしょ」
隣で鶏肉の下処理をしていた父が、黙って頷いた。相変わらず、口元だけが緩んでいる。私はソファに腰かけながら、そんな二人を横目に久しぶりの我が家を堪能していた。病気が治ったからか、母はいつも通りだった。父もほっとしているようで、私もまたリラックスできた。母は手際よく料理をして、いつものようにケチャップでオムライスに“退院おめでとう!”と書いてくれた。久しぶりに噛みしめる幸せを、私は心から堪能した。
夕食中はいつものように母が他愛もないことを話していた。けれど学校の話になった時、思い出したかのように私に言った。
「そう言えば涼くんは最近元気?」
「声聞く限りでは元気みたい」
母は口をとがらせながらオムライスを食べた。
「会えばいいのに。涼君しっかりしてるじゃない。彼女が白血病だからってうろたえたりしないでしょ」
プチトマトを食べながら私は肩をすくめた。
「うろたえはしないだろうけど、心配させるのも申し訳ないし。いくら心配されようと、病気がどうこうなる訳でもないし」
「彼女の事思うのが彼氏でしょ?カップルっていうのは二人だけなんだから、仲間外れにしちゃ可哀そうだよ」
そう言う母を父が静かに咎めた。
「二人のことだ。あまり首を突っ込むな」
「だってー」
母はそう言いながら頬を膨らませたが、それ以上は何も言わなかった。父は焼き鳥皿から取りながら言った。
「治って良かったな」
「ありがとうございました」
母と父と一緒に何度も頭を下げながら、私達は病院を後にした。病院から帰ると、母は慌ただしく夕食を作り出した。
「三週間ぶりにお家でご飯だもんね!きいちゃん、食べたい物とかあったらじゃんじゃん言って!」
最近は食欲も戻ってきていたので、私は母にオムライスを作ってもらう事にした。他に食べたいものはと聞かれたが、今はただオムライスが食べたかったので、他に思いつかなかった。一方母はオムライスだけでは気が済まないらしく、お手製の焼き鳥やとうもろこし、焼きそばなどを作ってくれた。
「今年は夏祭り行けなかったでしょ。だからお家でなんちゃって夏祭りしよ」
そう言いながら母はスーパーの袋からリンゴを取り出した。
「りんご飴も作るから!大ちゃんも好きでしょ」
隣で鶏肉の下処理をしていた父が、黙って頷いた。相変わらず、口元だけが緩んでいる。私はソファに腰かけながら、そんな二人を横目に久しぶりの我が家を堪能していた。病気が治ったからか、母はいつも通りだった。父もほっとしているようで、私もまたリラックスできた。母は手際よく料理をして、いつものようにケチャップでオムライスに“退院おめでとう!”と書いてくれた。久しぶりに噛みしめる幸せを、私は心から堪能した。
夕食中はいつものように母が他愛もないことを話していた。けれど学校の話になった時、思い出したかのように私に言った。
「そう言えば涼くんは最近元気?」
「声聞く限りでは元気みたい」
母は口をとがらせながらオムライスを食べた。
「会えばいいのに。涼君しっかりしてるじゃない。彼女が白血病だからってうろたえたりしないでしょ」
プチトマトを食べながら私は肩をすくめた。
「うろたえはしないだろうけど、心配させるのも申し訳ないし。いくら心配されようと、病気がどうこうなる訳でもないし」
「彼女の事思うのが彼氏でしょ?カップルっていうのは二人だけなんだから、仲間外れにしちゃ可哀そうだよ」
そう言う母を父が静かに咎めた。
「二人のことだ。あまり首を突っ込むな」
「だってー」
母はそう言いながら頬を膨らませたが、それ以上は何も言わなかった。父は焼き鳥皿から取りながら言った。
「治って良かったな」