ずしりと大きなおにぎりを持たされて、私は呆然とした。それに、私が食べないと心配で涼も食べれないって・・・。
「・・・何その理論」
聞いたことないよ。そんなの。それにもともと元気だとしても、こんなに大きいの食べられないって。そう言いたかったのに、目の前で心の底から心配している彼を見て、申し訳なさとその優しさへのありがたさで胸がいっぱいになった。こんなことで感極まるなんて。やっぱり最近は少し疲れているのかもしれない。私はなんとか笑ってみせた。
「こんなに大きいの、食べれないって。せめて半分こしよ」
つやつやした白米に塩をかけただけのおにぎりを、私は二つに割った。私が一口齧ったのを見て安心したらしく、涼ももう片方のおにぎりを受け取ってくれた。私が残りもちゃんと食べているか確認しながら食べている。ばか、残すわけないじゃん。
「明日の具は何がいい?握ってきてやるからさ」
「いいってば」
「じゃないときいちゃん、ちゃんと食べないでしょ」
「大丈夫だってば」
「だめ。元の体重になるまでおにぎり握るから。なんなら炊飯器ごと持ってくるよ」
「炊飯器ごとって・・・。先生に怒られるだけだよ」
そう笑ってから、私は付け加えた。
「具なんていらない。お塩だけで大丈夫」
おにぎりを食べながら、私達はいつものように笑って帰り道を歩いた。
 翌日から涼は言葉通り私の分のおにぎりも持ってきてくれるようになった。はじめは断ったけれど、私が食べないと本当に涼もおにぎりを食べなかったので、どうしたって食べる羽目になった。食べなければ、帰り道の間ずっと涼のお腹がなるからだ。食べてさえいればそのうちよくなる、そう思っていた私だが、涼のおにぎり以外を残しがちなのは二年生になってから相変わらずだった。
「きいちゃん、最近本当に食べないね・・・。何か悩んでたりする?」
ある日の晩、カレーをちまちまと食べていた私に母が聞いた。お腹が空いていないのに食べ物を口に運ぶのは大変だが、それにしても食べるのに時間がかかっていた。
「別に何もないよ。ちょっとお腹が空かないだけで」
「学校で何かあったりした?」
「何もないって」
「何かあったらすぐに言ってね。ほら、福神漬けも食べて。おいしいから」
「うん」