卒業式でもないのにこんなに騒ぐなんて、きっとうちだけだと思う反面、はやくはやく、と言いながら私をリビングに押す母を見て、照れ臭さと嬉しさが込み上げてきた。食卓にはから揚げやコブサラダ、スパゲッティやフライドポテト、そしてオムライスが並んでいた。相変わらず器用な文字で“一年間お疲れさま!”と書かれている。ケチャップ文字でこんなに綺麗に漢字を書ける人なんて他にいるだろうか。久しぶりに皆で食べる夕食は、とてもおいしかった。何も知らない私は、この時、本当にそう思っていた。
二年生に進学すると、私は朝寝坊することが増えた。寝ても体がだるく、やる気も起きなかった。
「きいちゃん、そろそろ時間じゃない?」
母が部屋の扉越しに声をかけてきた。私は
「うー」
とだらけた声で返事をし、のろのろと起き上がった。時計を見た。七時二十分。あと十五分で家を出なければ。いつも家を出る一時間前には起きていたのに。でも十五分あれば身支度なんて簡単にできる。やる気のでない体を引っ張りながら、私は洗面所で顔を洗った。リビングに行くと、母がトーストにジャムをぬっていた。私の席にも焼き立てのトーストが置かれている。母が時計をちらちら見ながら聞いた。
「大丈夫?食べる時間ある?」
こんがりと焼けたトーストを見ながら私は首を振った。時間はないわけではないが、朝だからか食欲がわかなかった。
「おにぎり作ろうか?途中で食べながら行きなさい」
そう言いながら母が席を立とうとしたので、平気、と言いながらそれを制した。母はまだ心配そうに私を見つめている。
「でも、なんか食べなきゃ。朝ご飯は大事なんだから」
「わかってるけど、今日はいいや。もう出なきゃ。行ってきます」
母の顔から目をそらし、私は家を出た。せっかく作ってくれた朝食に手をつけなかったことに、ごめんなさいと言おうと思っていた。おにぎりを作ろうとしてくれたことに、ありがとうと言おうと思っていた。けれどなぜか、そんな気持ちになれなかった。それどころか、食べなきゃいけないことは分かってるけど、食欲が湧かないから食べないのに、それでも食べろと言う母に、正直少し、イラついてしまっていた。だめだ、明日は早く起きてしっかり食べよう。
二年生に進学すると、私は朝寝坊することが増えた。寝ても体がだるく、やる気も起きなかった。
「きいちゃん、そろそろ時間じゃない?」
母が部屋の扉越しに声をかけてきた。私は
「うー」
とだらけた声で返事をし、のろのろと起き上がった。時計を見た。七時二十分。あと十五分で家を出なければ。いつも家を出る一時間前には起きていたのに。でも十五分あれば身支度なんて簡単にできる。やる気のでない体を引っ張りながら、私は洗面所で顔を洗った。リビングに行くと、母がトーストにジャムをぬっていた。私の席にも焼き立てのトーストが置かれている。母が時計をちらちら見ながら聞いた。
「大丈夫?食べる時間ある?」
こんがりと焼けたトーストを見ながら私は首を振った。時間はないわけではないが、朝だからか食欲がわかなかった。
「おにぎり作ろうか?途中で食べながら行きなさい」
そう言いながら母が席を立とうとしたので、平気、と言いながらそれを制した。母はまだ心配そうに私を見つめている。
「でも、なんか食べなきゃ。朝ご飯は大事なんだから」
「わかってるけど、今日はいいや。もう出なきゃ。行ってきます」
母の顔から目をそらし、私は家を出た。せっかく作ってくれた朝食に手をつけなかったことに、ごめんなさいと言おうと思っていた。おにぎりを作ろうとしてくれたことに、ありがとうと言おうと思っていた。けれどなぜか、そんな気持ちになれなかった。それどころか、食べなきゃいけないことは分かってるけど、食欲が湧かないから食べないのに、それでも食べろと言う母に、正直少し、イラついてしまっていた。だめだ、明日は早く起きてしっかり食べよう。