しばらく星を眺めてから、私は深く息を吸い込んで返事をした。リビングに着くと、母がにやにやしながら柿を食べていた。
「あらあら。王子さまとの電話はどうでした?」
「え。なんでそれを」
驚いている私をよそに、母は柿を堪能していた。パソコンで作業していた父が席に着きながらぼそりと言った。
「部屋のドア、閉めときなさい」
「あ」
顔が熱くなるのを感じながら、私は柿を齧った。あまい。
「お隣の真理子おばさんからのおすそわけ。ほら、実家が山梨でしょ。葡萄も桃ももらったんだから」
美味しいと頷きながら、私は柿を頬張った。食欲の秋。あんなカサカサの木から、こんなにみずみずしい実がなるなんて、不思議だ。
翌日の木曜、泉さんは学校を休んだが、金曜にはぴんぴんして学校に来た。鈴原が少し気にかけているように彼女に挨拶をしたが、彼女は以前の友達だった頃と同じように元気に
「おはよ」
と言っただけだった。立ち直りはえーな、とぼそぼそいう男子達をよそに、彼女は鼻歌交じりに教科書を出していた。休み時間、大丈夫なのかと泉さんに尋ねると、彼女はすました顔で答えた。
「泣くだけ泣いたらそれで終わりよ。次、次」
「ほんと、強いね」
私がそう言うと、泉さんは肩をすくめて笑った。
週末、私は涼とプラネタリウムを観に行った。見渡す限りの星空に、私も涼もただただ感動した。昔の人は、どうしてこんな無造作に散らばった星と星を繋ぐことができたのだろう。そんなことをぼんやりと考えながら、私は輝く星空を眺めていた。上映が終わると涼が伸びをしながら言った。
「いやー、まじですごかったわ」
私が頷くと、涼は目をキラキラさせた。
「光年ってさ、すごくね?」
「へ?」
私が首をかしげると、涼はただの白い半球のスクリーンを見上げながら言った。
「一光年って、一年前の光だろ?もしも地球の三百光年の光が届くところに行って、望遠鏡とかで見たらさ、三百年前の地球が見えるんだぜ?」
「そういうもんなの?」
おかしくて笑いながらそう言う私だったが、涼は首をかしげて真剣に考えていた。
「一日光年、いや、一光日?くらいなら頑張れば行けんじゃね?そしたら昨日きいちゃんが何してたかとかも見れるわけだ」
「涼は昨日じゃなくて百年前くらいを見た方がいいと思うけど。歴史のテスト、さんざんだったんでしょ」
「あらあら。王子さまとの電話はどうでした?」
「え。なんでそれを」
驚いている私をよそに、母は柿を堪能していた。パソコンで作業していた父が席に着きながらぼそりと言った。
「部屋のドア、閉めときなさい」
「あ」
顔が熱くなるのを感じながら、私は柿を齧った。あまい。
「お隣の真理子おばさんからのおすそわけ。ほら、実家が山梨でしょ。葡萄も桃ももらったんだから」
美味しいと頷きながら、私は柿を頬張った。食欲の秋。あんなカサカサの木から、こんなにみずみずしい実がなるなんて、不思議だ。
翌日の木曜、泉さんは学校を休んだが、金曜にはぴんぴんして学校に来た。鈴原が少し気にかけているように彼女に挨拶をしたが、彼女は以前の友達だった頃と同じように元気に
「おはよ」
と言っただけだった。立ち直りはえーな、とぼそぼそいう男子達をよそに、彼女は鼻歌交じりに教科書を出していた。休み時間、大丈夫なのかと泉さんに尋ねると、彼女はすました顔で答えた。
「泣くだけ泣いたらそれで終わりよ。次、次」
「ほんと、強いね」
私がそう言うと、泉さんは肩をすくめて笑った。
週末、私は涼とプラネタリウムを観に行った。見渡す限りの星空に、私も涼もただただ感動した。昔の人は、どうしてこんな無造作に散らばった星と星を繋ぐことができたのだろう。そんなことをぼんやりと考えながら、私は輝く星空を眺めていた。上映が終わると涼が伸びをしながら言った。
「いやー、まじですごかったわ」
私が頷くと、涼は目をキラキラさせた。
「光年ってさ、すごくね?」
「へ?」
私が首をかしげると、涼はただの白い半球のスクリーンを見上げながら言った。
「一光年って、一年前の光だろ?もしも地球の三百光年の光が届くところに行って、望遠鏡とかで見たらさ、三百年前の地球が見えるんだぜ?」
「そういうもんなの?」
おかしくて笑いながらそう言う私だったが、涼は首をかしげて真剣に考えていた。
「一日光年、いや、一光日?くらいなら頑張れば行けんじゃね?そしたら昨日きいちゃんが何してたかとかも見れるわけだ」
「涼は昨日じゃなくて百年前くらいを見た方がいいと思うけど。歴史のテスト、さんざんだったんでしょ」