「ねえ覚えてる?昔きいちゃん、木登りが大好きでさ、幼稚園にあるすごく高い木に登っちゃったの」
私は笑った。
「その話は何回も聞いたよ。猫みたいに降りれなくなって、先生たちが大変だったんでしょ?」
そうそうと笑いながら、母は次々に私の昔話を言ってきた。ようやく私の髪が完成するころには、私も母も大笑いだった。母は目から涙を流しながら、青い髪飾りを私の髪にさした。
「ほんとうに、なんであんなことしたんだろうねー。楽しかったの?」
「覚えてないよ、そんなことほんとうにしてたの?」
「してたよ、ちゃんと写真あるんだから」
母はそう言いながらアルバムを持ってこようとしてきたので、私は慌ててそれを止めた。
「いいって!もう時間ないし。そろそろ行かなくちゃ」
そう言うと、母は、あ、そっかと言って笑った。私はできあがった自分の髪を見て、感心した。母は本当に、器用な人だと。
六時過ぎ、私は地元の神社にいた。慌ててきて汗をかきたくなかったので、時間にとても余裕を持っていた。なのに涼は、すぐに現れた。Tシャツに短パンというシンプルな涼は、浴衣姿の私を見て、大げさなくらいに喜んでくれた。
「うわ。いい。めっちゃいい。きいちゃん、めっちゃきれいだよ」
私は恥ずかしくなって涼を叩いたが、涼はへらへら笑いながら、私の手を握ってくれた。とたんに顔が赤くなったのが自分でもわかって、私は思わずそっぽを向いた。けれどそれは涼も同じだったらしく、二人で手をつなぎながら、互いにそっぽを向きながら夏祭りを歩いた。その日の夜、打ちあがる花火を見ながら、私達はずっと手を握っていた。そして帰り際、人目のつかない場所で交わした口づけを、私は今でも覚えている。
母は私に彼氏ができたことを知ると再び手を叩いて喜んだ。どんな人なのか、どんなところが好きなのか、今度家に連れてきてなど、とても嬉しそうに、楽しそうに根掘り葉掘り聞いてきた。一方父はその話題には触れたくないようで、私と母がその話をすると決まって自分の部屋にこもった。母はそのことをまるで気にしていないかのように、とにかく私に好きな人ができたことを本当に喜んでくれていた。
私が涼を家に連れてきた時、父は出かけていなかったが、母は有名なケーキ屋さんに朝から並んだりして彼をもてなした。何も知らない涼もケーキを買ってきてしまったので、その日私たちはケーキを二個も食べた。
私は笑った。
「その話は何回も聞いたよ。猫みたいに降りれなくなって、先生たちが大変だったんでしょ?」
そうそうと笑いながら、母は次々に私の昔話を言ってきた。ようやく私の髪が完成するころには、私も母も大笑いだった。母は目から涙を流しながら、青い髪飾りを私の髪にさした。
「ほんとうに、なんであんなことしたんだろうねー。楽しかったの?」
「覚えてないよ、そんなことほんとうにしてたの?」
「してたよ、ちゃんと写真あるんだから」
母はそう言いながらアルバムを持ってこようとしてきたので、私は慌ててそれを止めた。
「いいって!もう時間ないし。そろそろ行かなくちゃ」
そう言うと、母は、あ、そっかと言って笑った。私はできあがった自分の髪を見て、感心した。母は本当に、器用な人だと。
六時過ぎ、私は地元の神社にいた。慌ててきて汗をかきたくなかったので、時間にとても余裕を持っていた。なのに涼は、すぐに現れた。Tシャツに短パンというシンプルな涼は、浴衣姿の私を見て、大げさなくらいに喜んでくれた。
「うわ。いい。めっちゃいい。きいちゃん、めっちゃきれいだよ」
私は恥ずかしくなって涼を叩いたが、涼はへらへら笑いながら、私の手を握ってくれた。とたんに顔が赤くなったのが自分でもわかって、私は思わずそっぽを向いた。けれどそれは涼も同じだったらしく、二人で手をつなぎながら、互いにそっぽを向きながら夏祭りを歩いた。その日の夜、打ちあがる花火を見ながら、私達はずっと手を握っていた。そして帰り際、人目のつかない場所で交わした口づけを、私は今でも覚えている。
母は私に彼氏ができたことを知ると再び手を叩いて喜んだ。どんな人なのか、どんなところが好きなのか、今度家に連れてきてなど、とても嬉しそうに、楽しそうに根掘り葉掘り聞いてきた。一方父はその話題には触れたくないようで、私と母がその話をすると決まって自分の部屋にこもった。母はそのことをまるで気にしていないかのように、とにかく私に好きな人ができたことを本当に喜んでくれていた。
私が涼を家に連れてきた時、父は出かけていなかったが、母は有名なケーキ屋さんに朝から並んだりして彼をもてなした。何も知らない涼もケーキを買ってきてしまったので、その日私たちはケーキを二個も食べた。