「みなさんちょっといいですかね、全員いるね、よし。ご飯は食べ終わった班が多いと思うんですけれど、見ての通り雨が降っております。ただ、あと十数分でやむみたいですから、それまでここで待機してください」
落胆の声が倉庫一杯にこだました。片桐も心の底からがっかりしていたが、しゃあないか、と言いながら鞄の中を漁った。中から出てきたのは、トランプだった。相生が驚きと称賛の眼差しで彼を見た。
「え?片桐君、トランプ持ってきたの?」
片桐は慣れた手つきでシャッフルしながら、まあね、と言った。
「俺ゲーム好きなんだよね。トランプとかオセロとかチェスとか。十分くらいでしょ、ババ抜き一回くらいできるべ、やろうぜ」
片桐の隣で上野が元気よく頷いた。
「お、いいね。やろやろ」
「わ!びっくりした!え?お前いつからいたんだよ」
片桐は驚きつつも、手際よくカードを配り始めた。
「お前班長だろ、班員ほっといていいの?」
湯河原が苦笑いしながらそう言うと、上野本人ではなく、片桐が後ろを振り返って彼の班に言った。
「おい、泉と南浜も来いよ。橋本さん達も良かったら一緒にババ抜きしよー」
そう言うと上野と同じ班の生徒がむこうから小走りにやって来た。
「え、いいの?やったー」
橋本と呼ばれた女子生徒はそう言いながら相生に手を振った。色白で真っ黒な髪が艶やかな綺麗な顔立ちの女子生徒で、凛とした眉毛が特徴的だった。その後ろにはハーフアップにした髪につぶらな瞳の女子生徒と、くりっとした目元で背の低い女子生徒がいた。泉と南浜はどっかとブルーシートに座ると、片桐が配るカードを受け取っていた。