六人班と五人班。周りでは着々とグループが結成されたり修正されたりしている。けれど最終的に空きのある班に入ればいいと思っていた私は、辺りの活動を落ち着くまで見守ろうとしていた。どこでもよかった。実際、あまり話したことのない人たちばかりだし、誰がどんな人かなんてわからなかったからだ。泉さんは既にどこかのグループに決まっていた。それどころか、こちらの班にきて、あちらの班にきてと引っ張りだこだ。
「いいじゃん、どうせみんな一緒でしょ」
泉さんはそう笑うけれど、それでも一緒の班になりたいという女子が彼女の元へ集まった。そんな中、数人の女子は彼女への嫌悪感を露にし、聞こえない程度の舌打ちをしたりもしていた。きっとこの場に先生が居なければもっと大体的にやるのだろう。
 どうして隠れたところで人を傷つけるのだろう。私は彼女たちの精神がやはり理解できなかった。それに、その程度ではきっと、泉さんにはちっともダメージなんか与えられない。あの時、女子トイレにいた泉さんはちっとも怯えてなんていないようだった。しっかりと言い返していたし、なんならその場にいた女子よりも優位にすら見えた。かげでいつ止めようかと迷っていた私とは比べ物にならないくらい強い人なのだ。だからきっと、私は泉さんの様にはなれないし、彼女が私と友達になろうと言わないのは、私がへっぽこだからだ。そう思いながら、引っ張りだこの泉さんと、陰で睨む数名たちとを見比べていた。どちらにせよ、彼女たちには“友達”がいるのだろう。私には、それがない。でも別に今回の遠足で作ろうなんて思っていなかった。だから本当にどうでもいいのだ、誰と一緒の班になろうと。どんな遠足になろうと。一人でいるのなら、どこにいても一人だ。
 けれどあまりにも我関せずの態度でいるのは失礼なのではと思った。ちょうどその時、前の席で他の男子と話していた谷川が振り向いた。
「八百瀬さん、班、決めないんすか?」
決めない訳ではないと思いながら、首を振ると、また別方向から声がとんできた。
「八百瀬さん、一緒の班にならない?」
そう声をかけてきたのは私がまだ話したことのない女子生徒だった。ふわふわした黒髪を後ろで束ねた彼女は、隣に小柄な女子生徒を連れてやって来た。
「あと一人足りなくてさ。もし嫌じゃなかったらどうかなと思って・・・」